「体育が嫌い?」
2002年度の学習指導要領の改訂で学習内容が3割減ったいわゆる「ゆとり教育」の時代、
円周率は3で計算するようになり、体育の授業時数は年間90時間に削減されました。選択教科のあった時代には、中学校などでは週5日の体育授業も可能だったにもかかわらず、この時代は週平均2.7時間、週3時間の体育授業もできなくなったのです。中学校では、音楽、美術、技術家庭科も実質週1時間に減らされました。美術や技術など、2時間続きの授業で制作に取り組むこともなくなったのでした。
その後、体育は、「週2.7時間の体育授業では子どもの体力低下を阻止できない」ということで週3時間、年間105時間に戻りました。音楽、美術、技術家庭科は実質週1時間のままですが、体育は子どもの教育にとって重視されているのです。
また、現在、多くの小学校では、音楽と図画工作(美術)の専科の先生がおり、中学校の音楽や美術の免許を持った先生が指導にあたっています。一時、体育も専科を作ろうという動きをした市がありましたが、ことごとく小学校の担任の先生たちから反対にあい、体育専科は実現していません。その反対の理由は、「小学校の学級経営において、体育の授業の占める影響が大きい」ので、「担任が授業をしたい」というものでした。
それほど、現在の学校教育において、体育の授業は子どもたちの教育に大きな影響を与えているのです。
ところが、子どもたちの「体育嫌い」の割合は増加しています。学研教育総合研究所が2019年に小学生を対象に実施した調査では、「保健・体育」は好きな教科で4位、嫌いな教科で3位に位置づけられました。1989年の同調査では、「保健・体育」は好きな教科で1位でした。
ある大変荒れた中学校に赴任し、「体育が好きな人」と手をあげさせたら、なんと「ゼロ」でした。「運動嫌い」な児童・生徒の割合が減った感じはしませんが、「体育嫌い」の児童・生徒は増えてきたように感じます。
やはり、それは、体育の授業、あるいは体育の先生に問題があるということです。
今年、私は県の中学校体育教育研究会の理事長を務めたことから、多くの小中学校の体育授業を参観する機会を得ました。その中で、「いまだにそんな授業をしているの?」と思うことがたびたびありました。
子どもたちの「体育嫌い」をなくすうえでも、一度、体育の授業を見直すようにして欲しいと思います。
そもそも、体育授業の目的は、「生涯体育・スポーツ」の考えに基づき、体育・スポーツを好きにさせ、将来も体育活動を日常生活に取り入れることのできる人を育てることです。言い換えると、「体育・スポーツに自立した人間」を育てることです。
皆さんの周りで、次のような体育の授業はありませんか? チェックしてみてください。
体育の授業は「訓練の場」ではない。
□ いつもいつも、授業の始めには、大きな掛け声を出して一斉に走らせている。
□ いつもいつも、準備体操は大きな声を出して、ラジオ体操をさせている。
□ いつもいつも、ストレッチ体操では、全員に号令をかけてやらせている。
(ストレッチ体操は呼吸を意識し黙って行うものです。)
□ 寒い冬場も、半袖・半パンツの着用を強要している。
□ 団体訓練や教師の説教の時間がやたらに長い。
体育の授業は、「遊びの延長」ではない。
□先生に文句(?)を言えば、種目が変わる。
・・・子どもたちが「サッカーをやりたい!」といえば、今日の授業はサッカーになるなど
□「持久走」や「水泳」など、しんどい種目の授業では見学や欠席の児童生徒が増える。
□授業やゲームのルールがはっきりわからない。
(昼休みに遊んでいる方が、ルールが明確・・・?)
□「選択授業」と称して、子どもたちに好きな種目のみ勝手にさせ、教師は単なる傍観者。
□授業中に、「自由時間」がある。
(特に多いのが水泳の授業中、「自由に泳いでいいよ」
・・・数学や英語の授業中に自由時間がありますか?)
安全への配慮に欠ける。
□ 実技授業で子どもがけがをさせることが多い。
□ 教科担任不在時(出張や年体時)の授業では、他教科の先生や管理職の先生が実技の自習監督をしている。(教師はネクタイ姿のまま、子どもの活動を見ているだけ)。
□ 水泳の授業で、「逆飛び込み」「潜水」「洗濯機」をさせている。
□ 中学校の柔道の授業で、禁止技(絞め技等)を教えている。
□ だらしない服装でも授業に参加させている。
・体操シャツはパンツの中にいれなくても特に指導はしていない。
・ジャージの胸チャックは大きく開けていてもOKとしている。
・運動に不適切なシューズでも特に注意をしない。
定期テストでは・・・
□ 毎年、同じような問題を出題している。または、何年か前と同じ問題である。
□ 20分程度でできる問題しか作っていない。または、テスト時間は30~40分である。
□ 全問、マークシートの問題である。
その他
□ 中学校の学習指導要領にない種目(ドッヂボールなど)を頻繁に行っている。
□ 授業で整列・・・「前にならえ」「なおれ」→「前から順に座れ」という指示をする。
□「できないことは仕方ない。」「太っている子には逆上がりなんて無理」という発言をする。
□ 「うちの学校の生徒はダンスなどできない。」と言い、ダンスの授業は全くしない。
□ 球技では、いつもパスやドリブル、シュートなどの個人練習が中心。「うまくなるまで、ゲームなどできない」と思っている。
□ 体育的行事は可能な限りしない。(運動会は隔年実施,マラソン大会や水泳大会などは決してしない,etc.)
□生徒は「体操座り」ではなく、「あぐら」をかいて話を聞いてもOK。
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