モンスター社員
皆さん、おはようございます。
「モンスターペアレント」という言葉を聞いたことがあるでしょう。
2007年、「教育技術の法則化運動」を推進し、TOSS(Teachers’ Organization of Skill Sharing)を創設、雑誌『教室ツーウェイ』を創刊した、東京の小学校教師、向山 洋一氏が造った言葉です。
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同じ時期に、「シュガー社員」という言葉も、社会保険労務士の田北 百樹子氏によって提唱されました。
『シュガー社員が会社を溶かす』という本では、
・突然何の連絡もなしに会社を辞める。
・仕事場で叱責すると、親が会社に来て抗議する。
・定刻通りに出勤しない(時間にルーズ)。
・会社よりもプライベートを優先し、業務に支障をきたす。
・自立心が乏しく、自信過剰である。
・退職のリスクが高く、会社の方針に従わない場合や業務をこなせない場合は、退職勧奨を受ける。
など、甘やかされて育った若手社員のことを指摘しています。
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また、同じ社会保険労務士の石川 弘子氏は、これを「モンスター社員」と呼びました。
あれから、約20年。「モンスター社員」は増える一方のような印象があります。しかし、
教師の世界も例外ではありません。「モンスター教師」も増加しているように感じます。
モンスター社員の6タイプ
モンスター社員とは、職場での勤務態度や言動等に著しく問題のある社員のことです。
以下の6つのタイプがあると言われています。
・協調性不足型
・自信過剰型
・素行不良型
・能力不足型
・自己中心型
・家族介入型
こういうモンスター社員がいると、生産性が低下し、他の従業員にも心理的負担が蓄積していきます。従業員の士気低下や退職を招き、企業イメージも悪化するでしょう。また、些細なトラブルから法的リスクを抱えることになったり、職場の安全性が低下したりします。
採用時にモンスター社員を見分けるための確認事項
モンスター社員による被害をなくす最も効果的な方法は、採用時にモンスター社員であることを見分けることで未然に防ぐことです。
1.職務経歴
2.人間関係のスキル
3.責任感
4.柔軟性
5.適切な自己評価
6.信頼性
7.モチベーション
8.インテグリティ
9.参考人の意見
10.説明責任

モンスター社員を辞めさせるために取るべき対応
正当な手順を踏まずに、正社員を解雇することは非常に難しいでしょう。モンスター社員を解雇するには、次のような手順が必要です。
1.問題行為を記録し証拠を残しておく。
2.注意指導を繰り返し行い記録する。
3.始末書・誓約書を作成する。
4.懲戒処分を行う。
5.退職勧奨する。
6.解雇する。
しかし、公務員、特に教師を解雇するのは、実は非常に難しいのです。
公務員は地方公務員法で守られており、①法律・条例・規則・規程に違反した場合、②職務上の義務に違反し又は職務を怠った場合、③全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合に、「免職」「停職」「減給」「戒告」の懲戒処分がありますが、よほどのことがないかぎ入り、法律上懲戒処分とはならない、訓告、厳重注意、口頭注意などで終わってしまいます。
公務員は、単に、職場の雰囲気を乱すとか、協調性がないなどの理由では解雇できません。
ただ、①勤務実績が良くない場合、②心身の故障で職務の遂行に支障があり又はこれに堪えない場合、③その職に必要な適格性を欠く場合、④職制若しくは定数の改廃又は予算の減少により廃職又は過員を生じた場合には「降任」「免職」の,①心身の故障で長期休養を要する場合、②刑事事件に関し起訴された場合には、「休職」の,条例で定める事由による場合には「降給」の分限処分を受けることがありますが、公務員は身分が保証されており、この処分は本人の意に反して受けることはありません。
しかし、周りにモンスター教師がいれば、管理職は、こまめに記録を取って、残しておくことが大切です。その記録によって、少なくとも児童・生徒に直接関わることのない職場に転勤させることが可能になるでしょう。
ダークトライアド
さて、最近は、人格心理学の研究が進み、生後の教育だけでは治らない性格の問題がクローズアップされています。そのひとつがダークトライアドです。
「ダークトライアド」とは、マキャベリズム、ナルシシズム、サイコパシーの3つの人格特性の総称です。このような人物と関わると、大きなマイナスが生まれるので、そのような兆候を感じた場合、その人とは距離を置くべきです。

マキャベリズム(欺瞞性)Machiavellianism:権謀術数主義
大胆、冷淡で、人を操ることで成功を得ようとする性格のことです。
協調性と勤勉性が他と比べて極端に低い傾向が出ている場合はこの性格に当てはまる可能性が高いと言われています。
・内部情報を不正に利用し、自己の利益を追求する。
・規則や手続きを無視し、自分の目的のために周囲を操作する。
マキャベリアニズムには、二枚舌での対人関係を好み、道徳の無視や自己利益と私利私欲のみへの強い関心を持ちます。マキャベリアニズムのスコアが高い人は無感情で、自分の役に立つかどうかという視点でのみ他人を見る傾向があります。そのため、従来の道徳から自己を切り離し、他人を操作することができるのです。また、マキャベリアニズム傾向の高い人は、計算高い策略家であるために目的を達成するまでは非常に忍耐強くなれる傾向があちます。
ナルシシズム(自己中心性)narcissism:自己愛症
一般的に「ナルシスト」と呼ばれている自己愛やプライドが高く、自分が優れていると思い込むことで他人に対して傲慢な態度をとるような性格のことです。サイコパスとも優位に相関していると言われています。外向性と創造性が高く、協調性が低いという傾向が極端に出ている場合は自己愛傾向が強い性格という可能性があります。
・自己顕示欲が強く、称賛や賞賛を求める。
・自分自身を他の人よりも優れていると見なし、他者を見下す。
ナルシシズムは自惚れや自己中心性が強く、自意識過剰で自己愛傾向が強い傾向があります。ナルシストは自分自身に過度に夢中になり、周囲から褒められることや誇大なセルフイメージを持ち続けることに躍起になる傾向がを持ちます。ナルシストは、他人に自己のセルフイメージを受入れさせることに専心するために、最初は魅力的に見えるかもしれませんが、ほとんどのナルシストは、他人への感情移入が難しいことや他人への関心が不足しているために、他人と本物の関係性を築いていくことに苦労します。
サイコパシー(反社会的傾向)psychopathy:精神病質
一般的に「サイコパス」と言われる性格的な気質で、自分以外の人に対する愛情や思いやりという感情が著しく低く、極めて自己中心的で、道徳的な概念が低く、感情も乏しい性格です。外向性と創造性が高く、協調性・勤勉性、情動性が低い場合、この気質を持っている可能性があります。
・感情や共感の欠如が見られる。
・冷酷で無慈悲な行動をとる。
・不正行為や違法な行動をためらわない。
サイコパシー は衝動的な感情反応の兆候があることが特徴です。サイコパスの未発達な感情の特性は、高いストレス耐性、他人への低い共感度や罪悪感の低さ、極度に刺激的な活動(セックス、暴力、麻薬あるいは金銭的リスク)への衝動があり、その結果、対人関係において衝動的な衝突の傾向が高く見られます。また、共感または良心の呵責といった感情の欠如、反社会的行動や感情の不安定さという特性もあります。
※ビッグファイブの傾向と特徴>
| 傾向 | 特徴 | |
| Extraversion (外向性) | 興味関心が外界に向けられる傾向 | 積極性、社交性、明るさ |
| Agreauleness (協調性) | バランスを取り協調的な行動を取る傾向 | 思いやり、優しさ、献身的 |
| Conscientiousness (誠実性) | 任感があり勤勉で真面目な傾向 | 自己規律、良心、慎重 |
| Neuroticism (神経症的傾向) | 落ち込みやすいなど感情面・情緒面で不安定な傾向 | ストレス、不安、衝動的 |
| Openness (経験への開放性) | 知的、美的、文化的に新しい経験に開放的な傾向 | 好奇心、審美眼、アイデア |
ダークトライアドの見分け方
このようなダークトライアドを面接で見抜くには、次の2つの特徴を知っておくことが有効です。
1.被害者シグナリング
苦難に遭遇した時に、それに立ち向かって解決を図ろうとするのではなく、「自分は被害者だ」と主張して苦しみを周囲に見せつけて、援助を得ることに腐心する。
2.美徳シグナリング
自分が道徳的に正しい立場であると、ことさらにアピールすることです。これは他者からの援助を得られる可能性を高めます。
自分は道徳的に善良であるにもかかわらず、加害者のせいで哀れな被害者になってしまったと不幸を嘆き同情を引こうとする言動には注意しなければなりません。本当にそうかもしれませんが、援助を引き出そうとするダークトライアドの典型行動でもありますので冷静に見極める必要があります。
例えば、自分がどのような「努力」をしたか?を確認することが大切です。その話がいつの間にか、自分がいかにかわいそうで道徳的に「正しい」かという話にすり替わっていく人だと、危険です。
また、「自責の念」があるかも重要です。自分には一切の非を認めず、100%「被害者」だとして振舞う人は、自分を被害者にするために相手を貶めるかもしれません。

ダークトライアドの3つの形質はすべて、実質的な遺伝的要素を持っています。
特に、サイコパシーとナルシシズムは比較的大きな遺伝性成分を持っていますが、マキャヴェリズムは他の2つの形質よりも遺伝性が低いことがわかっています。
また、ダークトライアドの拡大を「ダークテトラッド」と言い、ダークトライアドに新たに含められる「第4の特性」として「サディズム」を挙げられています。
「サディズム」sadismは、加虐性欲と呼ばれ、相手(動物も含む)を身体的に虐待を与えたり、精神的に苦痛を与えたりすることによって性的快感を味わう、また、そのような行為をしている自分を妄想したり相手の苦痛の表情を想像して性的興奮を得る性的嗜好の一つのタイプです。極端な場合、精神的な障害とも見なされ、この場合は性的倒錯(パラフィリア)となります。日本語において、サディズムの資質を備えた人間を指す通俗的な表現として、「サド」や「S」、「ドS」などがあります。
ダークトライアドテスト
⇓
https://www.idrlabs.com/jp/dark-triad/test.php
不適格教員(指導が不適切な教員)対応
不適格教員(指導が不適切な教員)の具体例
①授業が適切に行えない。
・無計画で,児童生徒を無視した自己中心的な授業を行う。
・教材研究を行わないなど、授業に対する意欲が見られない。
②生徒指導が適切に行えない。
・児童生徒の実態を把握できず、児童生徒とのコミュニケーションがとれない。
・児童生徒の意見を聞かず、一方的な指導しかできない。
③同僚や保護者と良好な関係が築けない。
・協調性に欠け、他の教職員と頻繁にトラブルを起こす。
・保護者と生徒指導上でのトラブルを起こし、信頼を失っている。
④教員としての能力・意欲に欠ける。
・仕事がルーズで、期限までにできない。
・児童生徒や学級の問題等の状況に対応しようとしない。
教師の不祥事
教員5大不祥事「イイコタコ」
イ:飲酒運転
イ:淫行(わいせつ行為)
コ:個人情報漏洩
タ:体罰
コ:公金横領
その他、交通違反・事故、不適切な指導、暴言・過剰な叱咤、理不尽な評価、児童生徒への精神的な負荷・不登校助長など、非違行為や常識に欠ける行為はあってはならないことです。
特に、わいせつ行為や体罰などの非違行為はそれ自体許されないものであるのみならず、教員に対する信頼、ひいては学校教育全体に対する信頼を著しく損なうものです。
国として対応
教員全体への信頼性を向上し、全国的な教育水準の維持を図るために、平成19年に教育公務員特例法が改正され、このような指導が不適切な教員に対して、指導改善研修を実施することや、研修修了時の認定においても指導が不適切であると認定した者には、免職その他必要な措置をすることなどが法律で規定されています。
教師対応とパワハラ
モンスター教師や不適格教員を指導する際、パワハラにならないよう注意しなければなりません。
特にダークトライアドに該当する教師には注意が必要で、基本的な人の性格を変えることは不可能であることを理解しておきましょう。
モンスター教師等に対して、相手を脅迫するような言葉や侮辱する言葉、度を越えた暴言には十分に注意して発言をし、動画・録音などを摂って細かく記録を残して、教育委員会(教職員課・人事課)に報告をあげ続けることがベストだと思います。
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まとめ
昨今、「モンスターペアレント」と同様、「モンスター社員」や「モンスター教師」も増加しているように感じます。
社員を辞めさせるためには、正当な手順が必要です。しかし、公務員、特に教師を解雇するのは、実は非常に難しいのです。
また、マキャベリズム、ナルシシズム、サイコパシーの人格特性「ダークトライアド」に対しては、知識・理解が必要で、周りにモンスター教師や不適格教員がいれば、管理職はこまめに記録を取って残しておくことが大切です。
