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3-8 教務主任(教務部長)

タイトル 3-(8)教務部長
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学校には校長(副校長)や教頭といった管理職とともに、主幹教諭がおかれています。主幹教諭も法的には管理職扱いですが、主幹教諭は、管理職の補佐や教職員の指導・育成に関わりながら、①学校運営の企画及び調整、②教務、③保健、④生徒指導等に関する校務の整理・調整を行うとされています。

教務主任(教務部長)=主幹教諭ではありません。すなわち、教務主任(教務部長)は管理職ではありませんが、実質は、校長(副校長)・教頭と教職員のリーダー的立場にある学年主任や部長などの間に立って機能する「ナンバー3」の存在です。

教務主任は、戦国時代の「軍師」に匹敵します。つまり、作戦・戦略を謀る参謀役です。戦国時代、織田家、豊臣家に重用された黒田官兵衛(別名:黒田如水・黒田孝高)は、天才軍師だったと言われています。同じように、教務主任の力量で、学校の栄枯盛衰も左右されるのです。

教務主任の法的根拠と位置づけ

学校教育法施行規則第二十二条の三、その③で、

『教務主任は、校長の監督を受け、教育計画の立案その他の教務に関する事項について連絡調整及び指導、助言に当たる。』

と規定されています。

学校組織というのは、一般的に三層構造でなりたっています。

第一層は、校長・教頭、第二層は、学年主任や部長、そして第三層は、学級担任や教科担任、校務分掌係が相当します。

教務主任は、第一層に対して、指導・監督を受ける。補佐的役割をする「上昇コミュニケーション」、第二層に対して、連絡・調整をする「水平コミュニケーション」、第三層に対して、指導・助言をする「下降コミュニケーション」が要求されます。

教務主任の役割

教務主任に必要な職務遂行能力は、大きく2つの側面があります。

(1)実務的能力

 「企画力」「調整力」「指導・助言力」「提案力・演出力」

(2)センス

 「時代の変化に敏感である」

 「情報に強い」

 「発想力が豊か」

 「人間関係をよくする」

 「自らのやる気を高める」

教務主任の具体的な役割

①校務分掌の提案・・・適材適所、指導体制、教師間の力量差への対応、

②教育課程編成・時間割作成・学校行事計画

③授業改善・・・わかる授業・楽しい授業の推進、道徳・学活の計画、総合的な学習の時間への取組など

④職員研修

事務処理・・・教育計画・報告書、情報公開への対応

⑥組織の活性化・・・共通理解(協動意識)・意欲・コミュニケーション・意思伝達・組織文化

⑦教育目標の提案と教育評価・・・スローガン設定、感想・意見・提案(改善策)を分ける

⑧教育環境整備・・・職場の整理整頓

⑨生徒指導・・・児童・生徒会活動、委員会活動、学校生活のきまり検討 問題行動、危機管理

⑩その他

これら、教務主任の役割遂行のためには、コミュニケーション」が鍵です。

一人の十人力より、十人の力」と言われますが、それぞれの階層とコミュ―ケーションをしっかりととり、チームワークを高めなれば、組織は機能しません。

コミュニケーションには、フォーマルなコミュニケーションとインフォーマルなコミュニケーションがありますが、教務主任は、どちらも重要視する視点が求められます。

教育成果を上げる考え方

ところで、チームスポーツの勝敗の結果は、次の6つの要素の掛け算の式で表すことができます。

勝敗の結果=①体力・体格 × ②技術(スキル) × ③戦術(作戦) × ④精神力 × ⑤チームワーク × ⑥運

掛け算の性質上、これらの要素のうち、ひとつでも「ゼロ」であると全体としての成果が「ゼロ」になります。バレーボールで例をあげると、いかに個々の体力・体格に優れ、スパイクやサーブの技術が高く、戦術や精神力に問題がなくても、チームワークが「ゼロ」だと、ゲームで勝利をおさめることはできないというわけです。逆にチームワークのいいチームは、2倍、3倍ものパフォーマンスを発揮できます。それぞれの要素の足し算(和)ではないところがみそです。

この考え方は、学校経営においてもあてはまります。

これら、学校の教育成果を高める6つの要素のうち、ひとつでもマイナスになると、学校全体として信頼を失い、機能しなくなるのです。

次に、それぞれの要素を教務主任としてどのように高めるかということについて、ポイントを述べましょう。

一人ひとりの教師力を高めるために、教務主任ができることは、職員研修を充実させることしかありません。

特に充実させたい職員研修の内容をあげておきましょう。

①学校要覧・学校紹介(対外的アピール) ②生徒指導共通理解 ③生徒理解 ④成績評価 ⑤成績処理 ⑥コンピュータの取扱い ⑦研究授業 ⑧救急処置 ⑨長期休業研修 ⑩総合的な学習の時間の取り組み ⑪道徳研究授業 ⑫校務分掌検討 ⑬教育課程編成

いずれにしても、職員研修は、教師が受け身になることなく、主体的に意欲を持って取り組むように仕組むことが大切です。

教育スキルとは、児童・生徒を指導し、教室を管理する教師の能力のことです。

教育の世界では、同じ言葉を言っても、A教師が話すと聞いている者の心に染み渡り、共感や信頼が得られるのに、B教師が話すと反感や反発を食らうという不思議なことが起こります。A教師とB教師の人間性の違いが出るのです。

教育スキルには、そのような教師の人間性も含まれ、学習指導能力、児童・生徒指導能力、コミュニケーション能力など、多くの要素が考えられますが、教務主任として、誰からも納得・理解されるのは、授業改善を計画することです。その方策として、主な取り組みをいくつかあげてみましょう。

学習指導部とのタイアップ

② 「わかる授業」「楽しい授業」の推進

③研究授業月間(週間)の設定

道徳批評授業研究の計画

 ⑤授業研究会の受け入れ

 ⑥教育実習生の受け入れ

 ⑦総合的な学習の時間への取り組み

教務主任として、一番の腕の見せ所が、いわゆる戦術・作戦の要素で、教育課程の編成、学校行事の計画、校務分掌の編成、時間割の作成などです。

学校に実態をよく分析し、その学校に応じた特色ある教育課程を編成し、学校行事を計画し、それぞれの職員の力量を鑑みて校務分掌を編成することが大切です。

ここでは、ある中学校で劇的に基礎学力を向上させた方策を紹介しましょう。

①英語・数学での25分授業の実施

②英語での少人数制別室授業

③英語・数学でのTT授業

④基礎学力検定の実施

⑤早朝自主学習会

⑥放課後の質問教室

⑦長期休業中の補充授業

⑧問題生徒に対する別室授業  

タイトル 特色ある教育活動の実践によって教育成果をあげた事例
特色ある教育活動の実践によって教育成果をあげた事例特色ある教育活動の実践によって荒れた中学校を立て直し、教育成果をあげた事例を紹介...

ストレスの多い教育現場では、心因性の疾患に悩む教師も多くなります。いくら職員研修を充実させ、教育課程編成に工夫を凝らしても、いわゆる教師の「やる気」がなければ、成果は期待できません。教務主任として、教師に達成感・有能感を抱かせることが大切です。日々の教育実践によって成果の上がっていることを、教師に実感させることで、次なる意欲が沸くのです。

教職員がストレスを感じる原因の殆どは、人間関係と長時間労働です。特に教師が疲弊している職場において、教務主任として、そこにメスを入れなければなりません。

人間関係については、職員の性質や経験も影響しますし、対児童・生徒、対保護者、対地域の方々などによって、その対応も違ってくるでしょう。教務主任としてできることは、教師同士の人間関係をよくする手立てをすることです。例えば、職員アンケートに個人の批判や苦情・文句の多い中で、教師の意欲は生まれません。アンケートを実施するならば、前向きな意見や提案(改善策)が出るような工夫をします。

また、長時間労働が習慣化しないように、「職員リフレッシュデー」を設定したり、会議の精選や打ち合わせの時間短縮を企図することが大切です。

一般的に、チームワークを高めるには、①ビジョンの共有、②具体的な目標設定、③役割分担の明確化、④コミュニケーションの円滑化、⑤「ほうれんそう」(報告・連絡・相談)と情報共有、⑥声がけ、⑦目標達成時の賞賛、⑧定期的な個別ミーティングが必要だと言われています。

学校においても、目標に向けてベクトルを共有し、共通理解を図りながら、きょうどう意識を高め、フォーマル・インフォーマルともにコミュニケーションを大事にすることが必要です。

ちなみに、「きょうどう」には、次の5つのケースがあります。

共同;common

 小集団で課題を分担して二人以上の人がいっしょに作業をする(使う)こと。  「協同」と同義に用いることがあるが、力を合わせることとは限らない。

 例:「共同浴場」「共同受信アンテナ」「共同研究」

共働;coaction(相互作用)

 共生的,敵対的・中立的な関係に大別できる。例えば、捕食者・被捕食者関係。

協働;

 集団内で同じ目的のために、ともに心と力を合わせて助け合って仕事をすること。

 例:「官民協働」「協働契約」

協働;cooperation,collaboration

 小集団として目的を共有して協力して働くこと。

教働:

 「教」員の「働」き方についてのコラムを集め発信する「教働コラムズ」とサイトが作った造語

ベクトルを共有するとは、たとえば、校訓や教育目標などを目につくところに掲示し、毎日確認できるような環境を作ることです。

また、共通理解を図り、協働意識を高めるには、主任会や児童生徒指導係会、教科打ち合わせなどの時間を時間割に組み込んで定期的に行うことがいいと思います。

コミュニケーションを高めるには、職員スポーツ大会、研修旅行、茶話会、懇親会などを計画することも考えられます。「そんなことまで教務主任がしなければならないのか」と思われるかもしれませんが、長い目で考えると、組織の活性化のために必要なことだと思います。

学校も生き物ですから、うまく経営がいっている時もあれば、そうでない時もあるでしょう。幸運な出来事に恵まれる学校もあれば、不幸な出来事に見まわれる学校もあります。「運も実力のうち」を言われますが、「運」を高めることに意識をもちましょう。

「運」を高める方策として一番にあげたいのは、教育環境の整備です。

割れ窓理論」Broken Windows Theory というのを聞いたことがあるでしょう。1980年代、年間に60万件以上もの重要事件が発生していたニューヨーク市が、ジェームズ・Q・ウィルソンとジョージ・ケリングの提唱した「割れ窓理論」を取り入れ、1990年以降、犯罪率を激減させた例です。割れたまま修理されていない窓があると、まもなく他の窓も割れます。そうすると、無法状態の雰囲気がたちまち広がり、都市においては落書きや風紀の乱れ、やがて深刻な犯罪へとつながるとする理論で、ディヴィッド・ガンが落書き清掃作戦でニューヨークの地下鉄再建の支援をしたのは有名な話です。一見、取るに足らない些細な環境を正しくしていくことによって、劇的に全体効果をあげることができます。

学校に関わる全ての人たちの美意識を向上させ、掃除の行き届いたキレイな学校にすることが、「運」を高める最大の方策です。

教務主任として、例えば、次のようなことが出来るのではないでしょうか。

例1:職員室の整理整頓、机上整理

例2:掲示環境の改善(ポスターコンクールの実施など)

例3:PTAや地域の方の協力による「花一輪運動

例4:飼育栽培(教室や廊下で観賞魚を飼うなど)

例5:言語環境の改善(「〇〇さん付け」運動、暴言禁止・敬語推進運動など)