掲示教育の効果
お通夜のトイレの中で・・・
祖母が亡くなって実家に戻った時、悲しみの中でトイレに入ったら、祖母の自筆で、「同じ一日なら、楽しい一日にしよう。」と書かれてありました。
思わず、「よし、楽しい1日にしよう。」とつぶやきました。
歩く姿勢が変えると・・・
ある中学校に赴任した時、生徒たちが皆、下を向いてうつむき加減で生活していたので、廊下の天井に「上を向いて歩こう!」という文字を書いて貼りました。
効果てきめん。
歩く姿勢が変わると、生徒たちも自信を持つようになるのです。
先日、その学校に行ったら、もう12年も前なのに、まだ、掲示してありました。
きっと誰かが見ている。
その学校では、先生の見ている前では生徒たちはいい子でしたが、先生のいない場では、タバコを吸ったり、いじめ・暴力をしたりすることが多発していました。
そこで、ある子の眼力を写真にし、「きっと誰かが見ている」というポスターを貼りまわったところ、これも効果てきめん、問題行動は10分の1になりました。
これは、ある警察署が自転車の無法駐輪や窃盗に困って、眼力の強いある職員のポスターを貼ったところ、無法駐輪が4分の1になったという事案にヒントを得たものでした。
ノーけが
教頭としてある大規模校に赴任したら、生徒数900人にもかかわらず、校地が非常に狭いのです。年間に500件の医療搬送するような生徒のケガが発生しており、教頭の車は常に門の入り口に置いてあったそうです。
赴任してすぐ、「生徒がケガをしたので、教頭先生の車を貸して欲しい」と言われたので断ると、「ケチ教頭」と言われました。
早速、「生徒がけがをしないような指導を見直そう」と呼びかけるポスターを貼りまくりました。
これも効果てきめん。
医療搬送は年間100件に減りました・・・(それでも多い)。
温かい教室
ニュージーランドに海外研修に行った時、どこの幼・小・中・高校とも、掲示物が素晴らしいという印象を持ちました。とにかく、教室が「温かい」感じがするのです。
日本では、特別支援教育家(?)の先生の中に、「前の掲示板はシンプルに。何も貼ってはいけない」と言われる方がおられますが、私は本当にそうなのかと疑心暗鬼でいます。
環境は人を育てる。
以前、私が勤めていた学校で、学年の途中で新校舎に移転したことがありました。
その時まで落ち着かない生徒たちだったのが、新校舎に移転した途端、非常に落ち着いて学校生活を送れるような生徒たちに変身しました。
学校の環境を整えるというのは、とても重要なファクターだと思います。
教室や廊下のポスター掲示にも気を配りましょう。
普段、教室の掲示物が剥がれたままにしてあることや、教室内にゴミが落ちていることは厳しく指導しなければなりません。
特に学校環境を破壊する行為は、健全な生徒の育成を阻む行為でもあると考えられます。校舎が古くても、古いことと汚いことが一緒ではありません。古い校舎でもいい環境は作れます。
教室環境づくりのコツ
学級の雰囲気は、教室の生徒たちに少なからぬ影響を与え、生徒たちを育てる大きな力になります。環境整備の大切さの例を二つあげましょう。
一つめは、1980年代、年間に60万件以上もの重要事件が発生していたニューヨーク市が、ジェームズ・Q・ウィルソンとジョージ・ケリングの提唱した「割れた窓理論」を取り入れ、1990年以降、犯罪率を激減させた例です。割れたまま修理されていない窓があると、まもなく他の窓も割れます。そうすると、無法状態の雰囲気がたちまち広がり、都市においては落書きや風紀の乱れ,そして深刻な犯罪へとつながるとする理論で、ディヴィッド・ガンが落書き清掃作戦でニューヨークの地下鉄再建の支援をしたのは有名です。一見、取るに足らない些細な環境を正しくしていくことによって、劇的に全体効果をあげることができます。
もう、一つの例は、ハードディスク用精密モーターで世界シェアの7割を握る日本電産です。日本電産は、本業の成功のみならず、M&Aを立て続けに成功させたことでビジネス界の注目を浴びています。いずれも、買収された会社は、それまでの長期低迷がうそのように、黒字化しています。会社を再建するにあたって、日本電産の永守社長は、雇用を守り、社長以下役員も留任させています。再建の秘策は、「二つしかあらへん。6S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ・作法)、職場をキレイにしなさい。もう一つは出勤率。休まんと会社に来てくれよ。」だそうです。特に6Sについては徹底されています。掃除をすると利益が出るのは、意識が変わるからです。永守社長は、「能力の個人差は5倍、意識の差は100倍」と述べています。
このように、教室環境を整備し、掃除を徹底することで、学級の雰囲気は一変します。教育環境の整備によって美意識を高めることが、落ち着いた学級の雰囲気作りに欠かせません。
①掲示物
以下の物が掲示されているか、チェックしましょう。
□校訓・学年努力目標
□学級目標
□週目標・月間目標
□クラスの当面の課題
□教師の願い・思い
□日番のきまり・約束事
□掃除当番表・掃除のきまり
□生徒会・委員会・週番の目標
□学級組織表(委員・係・日番・班)
□生徒の座右の銘
□時間割
□行事予定表・カレンダー
□学校だより・学年だより・学級通信・保健だよりなどの配布物
□格言・金言
□表彰状
□生徒の作品・作文・写真など
□時計・温度計
□学習・進路情報
□教室でのルール(発表ルール,話し方・聞き方,司会の仕方etc.)
また、掲示に必要な押しピン,セロテープ,両面テープ,はさみ,のり,チョーク,釘,金槌,ドライバーなどの工具・用具を常備しておきましょう。
なお、忘れ物をした生徒の名前を張り出すなど、マイナス評価の掲示はできるだけしないようにしましょう。
②座席
机や椅子が整然と並んでいるクラスは、正義感が育ちます。床にポイント等をうって机の位置を決めておくと、簡単に机が並びます。その際、両サイドの窓際や廊下側の机を壁から人が通れるくらいの距離を離して置くことが大切です。また、カバンの掛ける位置も決めて置くとよいでしょう。
また、座席の決定については担任がイニシャティブをとれるようなルールを作っておくことが大切です。授業中に私語の多い生徒が固まったり、忘れ物が多かったりよく注意をしなければならない生徒が後ろの方にいると、クラスがざわざわとした雰囲気になります。座席によってクラスの雰囲気が良くも悪くもなることを生徒たちに理解させ、安易にくじ引きで席替えをするようなことのないようにしなければなりません。
私のクラスでは、班単位で座席を決めています。以前は班会議を行いやすいように横2列,前から2~4人ずつの6~8人を1班としていましたが、視力の弱い生徒が後ろの席になる可能性があること,班員同士が横を向くので私語が多くなること,班ごとに提出物を集めたり、プリントを配布したりするのに不便であること,などの理由から、班員を縦1列に並べるようにしています。
座席を男女交互にしたり、列ごとに男女を決めたりするなど、座席を工夫することで、教室の雰囲気は一変します。座席決定は大切だということを生徒にも理解させておくと、例えば、修学旅行のバス座席を決定する時も、生徒の方から配慮するようになるでしょう。
③飼育・栽培
教室内で金魚や熱帯魚などの生き物を飼うことや植物を育てることは、教室の落ち着いた雰囲気作りに欠かせません。教室の前と後ろに金魚鉢を置いてみると、教室内を走ったり、暴れたりする生徒がいなくなります。また、金魚などは長く飼っていると、卵を産んだりすることもあります。生命の神秘に触れ、命の大切さを教える絶好の機会にもなります。不思議なもので、教室で飼っている金魚の様子で、クラスの状態を知ることができます。いじめや喧嘩などクラスの雰囲気が悪いと、金魚もゆったりと泳いでおらず、近寄れば逃げたりするなど、金魚も落ち着いていません。
また、生け花よりも土に根付いた植物や球根などを置くとよいでしょう。生け花は枯れてしまうので、よくありません。
学級の係の中に、飼育係や栽培係を設けると、生徒たちは責任をもって大事に育ててくれるものです。
④清掃指導
美しい教室を保つには、掃除がかかせません。まず、掃除用具を十分に備えておくことが大切です。雑巾を各自に持たせ、椅子の下に吊しておいて、一斉に雑巾がけの時間をとって行うのも効果があります。いくら担任が綺麗好きだからといっても、広い教室を担任一人で掃除をするのは不可能です。掃除用具箱と雑巾の置き場の整理整頓をみれば、そのクラスの清掃活動の状態がほぼ分かります。担任として、掃除用具箱と雑巾の置き場の整理は責任をもってやるべきだと思います。
また、掃除を嫌なものにしない工夫が大切です。罰として掃除当番をさせるなどもってのほかでしょう。清掃活動は、掃き掃除係,机運び係,机整頓係など,こまかく仕事を分け、短時間で終わるようにすると共に、担任も一緒に掃除を姿勢が必要です。そして、掃除が終わったら必ず評価し、よく掃除ができていれば褒めることを続けます。
さらに、学校や学年全体で、清掃美化強化週間などを設けるとより効果的ですが、時にはクラスで清掃活動に力を入れる期間を作るのもいいでしょう。私のクラスでは、ある時期、6つの班のうち5つの班に掃除を割り当て、残りの一つの班が掃除終了後に点検を行い、翌日、一番評価の悪かった班と点検班が交代するというルールを作って掃除をさせます。簡単なゲームのようですが、生徒たちは競って丁寧に掃除をし、教室は見違える程、美しくなります。
清掃時は生徒理解のひとつのよい場です。出来る限り、生徒と一緒に清掃活動を行いましょう。
⑤安全点検・修繕
教室内の床,壁,カーテン,ドア,ガラス,電灯,掃除道具箱など、しばしば壊れることがありますが、壊れたらすぐに修繕することが大切です。そのために、教室内に金槌,釘,ドライバーなどの工具を置いておくことも必要でしょう。
また、落書きなどを見つけた場合は、すぐに消すことです。黒板の落書きなども禁止しなくてはなりません。「黒板なら消えるから」という理由で生徒にチョークを自由に持たせている教室では、必ず、机や椅子へのマジックでの落書きに発展します。落書き消しの研磨剤やクリーナーなども教室の常備品として備えておきましょう。
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