はじめに
保護者が来校または電話を通じて、要望や苦情を話される場合は、不安や心配,怒りや焦りなどの思いを強く持っており、まずその気持ちを丁寧に汲み取ることが大切です。
また、発言や意見の裏にある、学校を良くしたい気持ちや保護者として子どもの成長への願いや思いなどに理解を示し、対応することが重要です
当初の対応が不適切であると、保護者の不安や心配が膨らみ、怒り等の感情が高まり、問題が重篤化するケースが出てきます。誠意ある対応を示し、保護者の気持ちが和らげば、大きな問題に発展せず、長期化することはありません。思いを汲み取り、誠意ある迅速な初期対応が最も大切です。
日常的な取り組みの発信・・・保護者との関係作り
保護者からの要望等を早期に把握するとともに、苦情の発生を防ぐためには、学校における日常的な取り組みを保護者に発信し、指導方針、体制等を理解してもらうことが重要です。学校での取り組みが正確に伝わっておらず、誤解を招き、それが不信感となる場合が多くあります。再度、学校の取り組みが発信され、理解してもらえているか確認をしてみましょう。
□年度当初、保護者に学校の方針、クラスの方針を明確に伝えている。
(子どもに何を学ばせ、身に付けさせたいか、学校のきまり、クラスの約束事)
□定期的に学校・クラスの状況を伝達している。
(学校・クラス便り、HP等を使った情報発信、学校生活の様子、子どもの成差等)
□子どもの変化が見えた時、その都度、保護者へ連絡(電話・家庭訪問)を入れている。
(表情が悪い、元気がない、級友と孤立している、些細なことで怒りだす等)
□子どもの問題行動を指導した際、指導内容をしっかりと理解させて下校させている。
また、子ども が下校する前に保護者に連絡を取って説明している。
けがを負った場合も同様に子どもが下校する前に保護者に連絡を取って説明している。
(指導した内容が子どもに届いているか、何をどのように指導したのか、ケガの原因・状況等)
□保護者会、家庭訪問時に情報交換、指導の共有が図れている。
その際、具体的に子どものこころの成長、意欲的な取組の内容等、プラス面を伝達できている。
□保護者からの学校・クラスの運営、教育活動に関する要望を汲み取る工夫がなされている。
(保護者会・家庭訪問時の聞き取り、定期的なアンケートの実施、連絡帳に記入してもらう。)
対応の流れ
①保護者からの苦情・要望
保護者との良好な関係作りの第一歩
【来校された場合】
・場所の設定
・対面に座らない。
・来校に対するお礼
↓
②傾聴
○主張をしづかりと受け止め、丁寧に最後まで聴く。(「でもね、お母さん」の一言で、不信感倍増)
○要望、苦情等の主旨を明確に把握する。(思いが隠されていることが多い)
・対応を焦らない
・曖昧な回答はNG
・未確認の客観的事実の謝罪NG
・「そうですか」「そうですね」が基本
・正論をぶつけない。
↓
③報告
○管理職、主任、生徒指導係に速やかに報告(個人で判断しない。)
↓
④状況確認
○情報の収集(複数の教員で行う。)
○事実を時系列で整理する(詳細な記録)
○複数で対応する
・推測で判断、記録をしない。事実のみを整理する。
・生徒への聞き取りは威圧的・強制的な態度にならないように注意する。
↓
⑤指導方針の検討
○情報を共有する
○関係職員だけでなく、組織で検討する。
○場合によってはSCや関係機関と連携を図る。
○対応窓口を一本化し、明確にする。
○対応者、対応する時間、場所を設定する。
・保護者の心情を推測して、対応策を考える。
・安易に要望を引き受けず、学校が取り組めることを明確にする。
・相手がいる場合、その生徒・保護者のことも考慮し、指導方針を決定する。
その際、個人情報の流出には十分注意する。
↓
⑥保護者対応
○保護者への正確な事実の説明
○保護者の要望への対応方針を具体的に説明
・現象面の解決ではなく、中長期的な見守り体制、具体的指導の方策を伝える。
・文書での回答はできるだけ避ける。
↓
⑦事後対応
○原因の分析
○再発防止(指導方針、体制の見直し)
○情報の共有(全体で共有)
・問題点を振り返り、再発肪止に向け、指導方針・体制を改善する。
・全体での研修を行う。
対応のポイント
①初期対応
最初の対応を間違えるとはじめの問題とは別の問題が発生してしまうことが多々あります。
傾聴、要望の論点の把握、対応を焦らないことが重要。
勝手な判断で、保護者の要求を引き受けたり、文書回答に応じることは絶対にやめましょう
(すぐに結論を出さない。)
②迅速
持ち帰って、協議した内容、聞き取り調査等、返答を要する場合はその日または次の日に
返答を。協議・調査中であっても、その経過を知らせることが大事。
③謝罪
適切な謝罪は必要不可欠。
心理的事実(相手が心で感じた事実)・・・最初に謝罪
客観的事実(実際にあった事実)・・・事実関係を調査してから
④傾聴
視線をあわせる、相づち、綴り返し、言い換え、要約が効果的です。
⑤組織的対応
個人で判断した言動を捉えて問題が大きくならたり、別の問題が発生することがあります。個人の発言でも、学校の発言と捉えられるので、慌てて返答せず、管理職、関係職員に相談し、協議して複数で対応することが重要です。
⑥学校責任
学校の責任が問われているケースは大きな問題に発展する場合が多いです。
特に初期段階で保護者に不安や不満を抱かせてしまうと、新たな問題を生じさせてしまい
ます。丁寧に対応するとともに、即座に対応することが必要です。
できるならば、その日に状況確認、指導方針決定、保護者・生徒対応を心がけてましょう。
また、全ての事実関係がわからなくとも家庭訪問し、誠意を見せることが大切です。
⑦面談の終わり方
帰り道に相談者がどういう気持ちで帰るのかを考えて、面談を終えましょう。
(子どもも同様)
特殊なケース
〇学校だけでなく、教育委員会や関係機関と相談しながら対応にあたる。
〇理不尽な要慮
・威圧的に無理難題を押し付けてくる。
・金品を要求してくる。
・同じ苦情を何度も持ち込み、長時間居座る。
・加害生徒に対し、過度の制裁的な懲罰を求める。
・配慮が必蔓な方からの要求・・・社会的な常識の範囲で理解することができない。
*校外で会わない(保護者以外の方も加わる可能性がある、相手の間合いに入らない。)
*曖昧な返答、その場しのぎの対応を避ける。
*複数で対応し、毅然とした対応をする。
*きっちりと記録を取る。必要であれば、相手の了承を得て、会話を録音する。
*学校が取り組めること、できないことを協議しておく。(法的な根拠の理解が必要)
*記録をもとに、SCや専門家のアドバイスを受ける。
対応方針と具体的改善策の検討
保護者対応のためには今後の指導方針と具体的な方策を提示しなければなりません。
【検討のポイント】
①要望・苦情の主旨
②問題の背景
③どの事実に謝罪、改善するのか?
④子どもが望む対応
⑤今後の子どものためになる方策
⑥学校の取り組みをどのように説明するのか?
⑦学校の対応・取り組みは他の生徒・保護者に理解されるか?
⑧学校が行うべきであるか、対応できることか?
⑨学校が対応するのが難しい要望を毅然と断れるか(法的根拠)
⑩関係機関、専門機関に協力を依頼すべきか?
※組織対応を円滑にするために・・・「ほうれん草は調理して確認!」
「報告・連絡・相談」は大切ですが、この後に、「調整・理解・確認」という流れが必要です。組織でのかかわりを調整し、みんなで理解し、解決できたかの確認をすることで、より良い対応になります。
最後に(管理職の先生方に・・・)
「モンスターペアレント」という言葉が生まれて久しくなりましたが、本来、教育・子育てに関して、学校と保護者がベクトルを同じくしていれば、対立などすることもなく、モンスターペアレント等も出現しないと思います。しかし、現状は、多くの教師が保護者対応に苦しんでいます。
保護者対応に関しては、管理職のリーダーシップが必要です。適切な指導・助言を与え、問題を共有する姿勢を貫いて、「保護者対応で先生方がつぶれない」ようにお願いをしたいと思います。