皆さん、おはようございます。
今日11月17日は「将棋の日」です。江戸幕府8代将軍、徳川 吉宗が「御城将棋の日」とし、年に1回の御前対局を制度化したことから、日本将棋連盟が1975年に「将棋の日」を制定しました。
将棋といえば、今年2023年10月11日、23歳の藤井 聡太さんが8大タイトル制覇を達成したことで話題となりました。
厳しい勝負の世界に生きているプロ棋士の方は、多くの著書や名言を残されています。いくつかを紹介しましょう。
『いつも私は「忍」をモットーとし、「七転八起」を座右の銘として戦ってきた。勝負は日常心にある。不運が続くと思ったら虚心になって変化を目指せ。不運を幸運に変える要諦はこれしかない。性格の激しい人、口の達者な人、目立ちたがり屋の人も永続きしない。無口な人間が勝ち残るだろう。』(大山 康晴)
『私は以前、才能は一瞬のきらめきだと思っていた。けれど今は、10年とか20年とか30年とか、同じ姿勢で同じ情熱を傾け続けられることが才能なんだと思う。三流は、人の話を聞かない。二流は、人の話を聞く。一流は、人の話を聞いて実行する。そして、超一流は、人の話を聞いて工夫する。』(羽生 善治)
『勝負師として伸びる人というのは、まず素直であること。そして、その反面、頑固というか、自分の芯を持った人です。一流の素質は、「好き」と「努力をし続けられる」ことです。』(谷川 浩司)
さて、今回は、8大タイトルについて簡単に説明し、将棋に関する話題を2つしましょう。
8大タイトル
① 竜王(りゅうおう)
② 名人(めいじん)
③ 王位(おうい)
④ 王座(おうざ)
⑤ 棋王(きおう)
⑥ 叡王(えいおう)
⑦ 王将(おうしょう)
⑧ 棋聖(きせい)
竜王
主催は読売新聞社。
まずはランキング戦と呼ばれるクラス別トーナメントを行い、各クラスの成績優秀者11名で挑戦者決定トーナメントを行った上で、優勝者がその年の挑戦者となります。
本戦では持ち時間8時間の7番勝負を行います。
永世竜王の条件は、連続5期または通算7期のタイトル保持で、渡辺 明氏と羽生 善治氏が取得しています。
名人
主催は朝日新聞社と毎日新聞社。
1年間かけて行われる順位戦のトップリーグであるA級順位戦で優勝すれば挑戦権を獲得できます。つまり、1年ずつ徐々にクラスを上げていかなければ挑戦権を得ることもできません。
本戦では持ち時間9時間の7番勝負を行います。
永世名人はかつて世襲制でしたが、実力制になってからの条件は、通算5期のタイトル保持。
木村 義雄氏、大山 康晴氏、中原 誠氏、谷川 浩司氏、森内 俊之氏、羽生善 治氏が取得しています。
王位
主催は新聞三社連合。
まずは予選を戦い、予選の勝者と前期からの勝ち残りの棋士で紅白2組に分かれた挑戦者決定リーグが行われます。そして紅白それぞれの優勝者同士で挑戦者決定戦を開催します。
勝者は本戦で持ち時間8時間の7番勝負を行います。
永世王位の条件は連続5期または通算10期のタイトル保持。
大山 康晴氏 中原 誠氏 羽生 善治氏が取得しています。
王座
主催は日本経済新聞社。
予選はすべてトーナメント戦で、1次予選、2次予選、挑戦者決定トーナメントを経て挑戦者が決定します。
本戦では持ち時間5時間の5番勝負を行います。
王座に関しては永世ではなく「名誉王座」という称号になります。
連続5期または通算10期のタイトル保持が条件で、中原 誠氏、羽生 善治氏が取得しています。
棋王
主催は共同通信社。
まずは予選が行われた後、予選の勝者とシード棋士で挑戦者決定トーナメントが行われ、挑戦者が決定します。
本戦では持ち時間4時間の5番勝負を行います。
永世棋王の条件は連続5期のタイトル保持。
羽生 善治氏と渡辺 明氏が取得しています。
叡王
主催は株式会社不二家。
2017年に昇格した最も新しいタイトル戦です。
叡王戦では、まず棋士が4段~9段の段位別予選に出場。段位別予選を勝ち抜いた棋士が本戦トーナメントに進み、その優勝者が挑戦者となります。
この段位別予選は持ち時間1時間で、スピーディーな展開が見どころです。
本戦では持ち時間4時間の5番勝負を行います。
叡王戦は永世称号の規定がなく、取得者はいません。
王将
主催は毎日新聞社とスポーツニッポン新聞社。
まずはトーナメントによる1次予選と2次予選が行われます。
2次予選を勝ち抜いた棋士と前期からの残留者の7名で挑戦者決定リーグを行い、1位になった棋士が挑戦権を獲得します。
この挑戦者決定リーグは将棋界の中でも非常にレベルが高いリーグとして有名です。
本戦では持ち時間8時間の7番勝負を行います。
永世王将の条件は通算10期のタイトル保持。
大山 康晴氏と羽生 善治氏が取得しています。
棋聖
主催は産経新聞社。
かつては序列3位のタイトルでしたが、契約金の引き下げなどで序列が降格します。
2009年に序列6位、2015年からは序列8位になっています。
棋聖戦の予選はすべてトーナメント戦。1次予選、2次予選、決勝トーナメントを勝ち進んだ棋士が挑戦権を獲得し、本戦では持ち時間4時間の5番勝負を行います。
永世棋聖の条件は通算5期のタイトル保持。
大山 康晴氏、中原 誠氏、米長 邦雄氏、羽生 善治氏、佐藤 康光氏が取得しています。
「俺が詰まれるわけにはいかん。」
日本の将棋界に最も貢献した棋士は誰かと問われると、間違いなく升田 幸三氏でしょう。
戦後、連合国軍総司令部(GHQ)は、日本の武道をはじめ、歌舞伎の「忠臣蔵」や「勧進帳」、剣術映画、そして、はり灸までも、危険な文化と見なし、禁止しようとしました。当然のように「将棋」も、そのターゲットとなっていました。将棋は取った相手の駒を自分の兵隊として使用しますが、それは捕虜の虐待であり、人道に反するとしたのです。また、将棋史上最強と言われ、「常勝将軍」とも賛美された「名人」木村義雄が軍関係者に重宝され、海軍大学で講義するなどしていたことも影響していました。
GHQに呼び出された升田幸三は答えます。
「チェスこそ、捕虜の虐待、いや虐殺である。」
「将棋では常に全部の駒が生きている。これは能力を尊重し、それぞれに働き場所を与えようという思想だ。
「しかも、敵から味方に移ってきても、金は金、飛車なら飛車と、元の官位のままで仕事をさせるのだ。」
升田は缶ビールを片手に、尋問を受けるどころか、
「木村名人が海軍大学などを講演して回り、おかげで日本は戦争に負けたのだ。オレが代わりにやっとったら、日本が勝っておる。おんどれらにとっちゃ、あの人は大恩人なんだぞ。」
と、逆にとうとうと5時間以上も説教を垂れたのでした。そして、将棋は生き残ったのです。標的となった多くの他の文化と違い、一度も途絶えることなく、現在に至ることができたのでした。
さらに、
「巣鴨にいる戦犯の連中を殺さんで欲しい。生かして役立てる道を考えてもらいたい。」
と意見しました。巣鴨にいたA級戦犯の中には、元総理大臣、安倍 晋三氏の祖父である岸 信介総理大臣がいたので、今でも、将棋は政府から重宝されているのだそうです。
「勝負は日常心にあり。」
時々、ふらっと、倉敷に行って美観地区を歩きたくなります。倉敷が生んだ有名人といえば、将棋の大山 康晴でしょう。
大山氏の名人通算は歴代最多の18期。棋戦優勝は羽生 善治氏に次ぐ44回。十五世名人、永世十段、永世王位、永世棋聖、永世王将の五つの永世称号を持っています。特筆すべきことは、29歳でタイトルを手にし、35歳から47歳までは5タイトルのうち3冠以上を保持し続け、一度、49歳の時にタイトルを全て失って無冠となりましたが、50歳にして「十段」位を獲得し、「棋聖」にも返り咲き二冠、59歳までタイトルを維持したということです。
大山名人はたくさんの著書を残されていますが、その中で、「勝負のこころ」(PHP文庫)に書かれていることを紹介します。
「いつも私は「忍」をモットーとし、「七転八起」を座右の銘として戦ってきた。その結果が、優勝百十回という記録を作ることとなった。記録は意識して作るものではなく、一つ一つの積み重ねが、結果として大記録となったのだと私は思っている。」
「勝負は日常心にあると私は思う。ふだんトレーニングを怠って、いざ勝負の場に臨んで力を出そうとしても成功するものではない。小さいことの積み重ねが、その人の実力となってあらわれる。長い勝負の生活の体験から、私はそう信じている。」
大山氏は、名人を失った時、1日100本吸っていた煙草を断ち、ゴルフも一瞬のうちに決断を迫られる将棋の勝負には不向きと考えてやらなくなったといいます。毎日、毎日がトレーニングの連続であり、食事にも気をつけ、常にコンディション作りに気を配ってきたのだそうです。世の中のことは、せんじつめると、すべて勝負につながってきます。白黒はっきりつくものと、そうでないものとの違いはあっても、人生は勝つか負けるかの勝負の連続です。そして、勝負に勝つ秘訣は、日常心にあると言っています。
また、大山氏は、こんなことも書いています。
「同世代の仲間のうちで、私だけがずば抜けた才能に恵まれていたのではない。むしろ逆であって、ずば抜けた天才でなかったから、長く名人の地位にとどまることができたのだと思う。」
「弟子には手をとって教えないが、疑問には答えてやる。自分で学ぼうとする姿勢には、師匠としては力を貸してやる。・・・褒め方は、非難することより難しい。褒めてやることが、その人の実力を過大評価するものなら、害こそあれ、益はない。その人は、力を過信して、いつかは化けの皮がはげる。そういう褒め方なら、褒めない方がその人のためになるだろう。」
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