背中で語る
皆さん、おはようございます。
中学校や高校では、卒業式が終わると、在校生だけの時間が訪れます。
上級生の教室がガランとし、少し活気のなくなった学校では、下級生たちが「さあ、僕たち私たちも先輩になるんだ!」という雰囲気を醸し出します。
そして、卒業した先輩たちと直接話をする機会がなかったにせよ、先輩たちの残した思いを感じる時期です。
先輩たちは、「背中で語って」旅立ったのです。
この「背中で語る」という表現は、日本語独特の表現でしょう。 一般に、日本語は世界でも難しい言葉だと言われていますが、日本語でしか理解出来ない表現がたくさんあります。
「過ちは繰返しませぬから」
カナダのモントリオール大学で長年、日本語科科長を務めてこられた金谷 武洋先生が、『日本語に主語はいらない』という本を出されています。
たとえば、広島の平和記念公園の中にある慰霊碑には、「安らかに眠って下さい。過ちは繰返しませぬから」と刻まれていますが、ここにも主語はなく、「過ちは繰返さない」と言っているのは誰かと書かれていません。
日本語では、「誰の過ちか」を明らかにしないのです。
犯人探しをするのではなく、誰を攻撃するのでもなく、「過ちは繰返さない」と静かに共感して誓うのが日本語文化の発想なのです。
タタミゼ効果
その金谷先生は、これまで300名近い学生を日本に留学させてきたそうですが、学生たちは、日本語を学ぶと、性格が穏やかになり、人との接し方が柔らかくなって帰ってくるのだそうです。
日本語には、「タタミゼ効果」といって、「人を優しくする力」があるという方もいます。「タタミゼ(tatamiser)」とは、「畳」を動詞化したフランスの造語で、「日本人っぽくなる、日本びいきになる」という意味でも使われています。
日本は「和」をこれまで大切にしてきた国です。外国の人でも、日本語に接していると、自然に優しく穏やかになるというのと同じように、これから先輩になる在校生たちは、これから入ってくる後輩に対して、ぜひ、「背中で語れる」ような先輩になって欲しいと思います。
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