モルガンルール
1996年、アメリカ、マサチューセッツ州ホーリヨークという街で、バレーボール生誕100周年記念祭が開催されました。バレーボールを作ったWilliam G. Morganの出身地で、モルガンの孫娘さんがモルガン氏のことを語ってくれました。モルガン氏は、とても優しいおじいさんで、誰に対しても平等で、特に困っている人をナチュラルに助ける人だったそうです。
1895年、モルガン氏がバレーボールを考案したのは、その4年前にネイ・スミスが考案したバスケットボールの反省からでした。当時、YMCAの体育館で冬のスポーツとして行われていたバスケットボールでは、高齢者や体力のない者は、体育館の壁にくっついてしり込みし、動かなかったのだそうです。そこで、老若男女が一緒に楽しめるスポーツとしてモルガンが考案したのがバレーボールでした。
当時は「ミントネット」と呼ばれており、モルガンが最初に考えたルールは、次のようなものでした。
このモルガンルールでバレーボールをやってみると、結構、面白いものです。その後、バレーボールのルールは、時代とともに目的に応じで様々に変遷をとげてきました。
バレーボールのルール
今日、バレーボールほど、ルールが変わってきたスポーツはないのではないでしょうか。
現在、一口にバレーボールといっても、オリンピックでやられている6人制や2人制のビーチバレーだけでなく、ママさんバレーや実業団などでされている9人制(今でも国体で実施されています)や、4人制のトリムバレーなどがあります。
一般にスポーツのルールは、ゲームをする側,見る側の「快」の追求にあります。
つまり、ゲームをする者にも、ゲームを見る者にも、無用なトラブルをなくし、ゲームをよりよく楽しむために設定されてきたのです。
たとえば、バレーボールのネットの高さの変遷をみてみましょう。
バレーボールの発祥地アメリカにおいては、当初6フィート6インチ (約198 ㎝)であったものが、1900年に7フィート6インチ (約228 ㎝),1916年には8フィート(約243 ㎝)と、次第にネットが高くなっています。直線的なボールが相手コートに返されてゲームの中断するのを防止し、ラリーを継続して楽しもうとしたのです。
これに対し、極東(東アジア)においては、伝来した当時の7フィート6インチ (約228 ㎝)から、1934年に230 ㎝と一時高くなりましたが、1941年には225 ㎝に下げられています。ネットを低く保つことによって、スパイクを打ちやすくし、攻撃的なバレーボールの展開がなされてきたのです。
ラリーポイント制
6人制バレーボールは、長い間、「サイド・アウト制」の15点マッチで行われていました。サーブ権のある時にポイントしないと点数にならないので、接戦しているように見えても、サーブ権をとり合うだけで点数が全く入らないなんてこともよくありました。
ところが、1999年、バレーボールのルールに大きな変更がありました。サイド・アウト制から「ラリー・ポイント制」の25点マッチで行うようになったのです。ラリー・ポイント制に変更した理由は、次の4つが考えられます。
(1)従来のサイド・アウト制では、試合時間が長引き、連戦になると選手の疲れが激しく、健康管理上の問題がある。
(2)試合時間の長短に幅がありすぎ、第2試合以降の開始時間が不明瞭になってしまって、試合の運営面で問題があった。
(3)試合時間に長短の幅があると、テレビ放映上、放映枠が取りにくいため、90分から120分で1試合が終わるように工夫して欲しいとの強い要請が、マスコミ関係者からあった。
(4)ルールを知らない人にとっては、サーブ権によって得点が入ったり、入らなかったりするのが分かりづらかった。
これらのうち、(3)(4)は、プレーヤーからの申し出による変更やプレーヤーのための変更ではなく、メディアや見る人の利益のために行われたもので、どちらかというと、(1)(2)より強かったと言われています。
ルールを工夫してバレーボールを楽しもう!
さて、体育の授業なんかで、経験の浅い子どもたちに、正規の6人制バレーボールルールで行うと、ラリーは続かず、全く楽しくありません。しかし、逆に言うと、ルールを工夫すれば、いくらでもバレーボールのゲームは楽しむことができるのです。
たとえば、
その他、いろいろなローカルルールが考えられます。
また、使用するボールやゲーム人数、コートの大きさ、ネットの高さを変えることで、いくらもバレーボールを楽しむことができます。スパイクが決まったらハイタッチ(!)・抱き合う(?)なんていうルールもいいでしょう。
そういう経験を通じて、「『きまり』を工夫すれば、楽しい社会生活を送ることができる」ということを学ばせることができたら正解です。
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