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ゴール寸前「慎始敬終」年の瀬、学年末には、最後まで手を抜かずにやり通しているか、自問自答しましょう!

タイトル ゴール寸前
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ゴール寸前「慎始敬終」

慎始敬終(しんしけいしゅう)とは、中国の古典「礼記(らいき)」に見られる言葉で、物事を最初から最後まで気を抜かず、手抜きもせずにやり通すことを言います。特に、勝負の行方はゴール寸前にあることが多いものです。年の瀬や学年末になった時、最後まで手を抜かずにやり通しているか、自問自答しましょう。

早すぎるガッツポーズ

2024年の夏に行われたパリオリンピック陸上女子3000m障害の予選で、決勝進出を確信したドイツのオリビア・ギュルト選手が、ゴール瞬間にガッツポーズをしたために、残念な結果に終わるという事件が起こりました。

この予選では、上位5着まで決勝に進出できることになっていました。バーレーンのヤビ選手とエチオピアのアルマイェウ選手が1着、2着でフィニッシュし、その後、アメリカのコンスティエン選手が3着で予選を通過しました。そして、残り2人となったところで、ドイツのオリビア・ギュルト選手は4着の位置にいました。しかし、最後のストレートで、カザフスタンのジェルト選手、イギリスのバード選手の2人が猛追を見せます。

ところが前を行っていたギュルト選手は勝利を確信し、ゴールラインをまたぐかどうかのギリギリのところで両手を挙げ、ガッツポーズをし始めたのです。しかし、その横を2人の選手が走っていきました。

予選敗退…ガッツポーズをしたため?

ギュルト選手は笑顔でフィニッシュしましたが、ゴールの瞬間は3人横並びの状態で、着順は写真判定に委ねられることになりました。4着、5着と6着とのタイム差は僅か0.01秒。6着で予選敗退となったのは、なんとガッツポーズをしたギュルト選手という結果になりました。ギュルト選手は、自己ベストの記録を出したものの、ギリギリのところで決勝進出の逃してしまったのでした。

「九仞の功を一簣に虧く」

「きゅうじんのこうをいっきにかく」とは、せっかく努力を積み重ねてきたのに、もうひと息のところでやめてしまって、功績を残せないことを言います。

「仞」というのは長さの単位で、今の180㎝程にあたります。すなわち、9仭は約16mです。「簣」とはもっこのことで、土を運ぶ時に用いる竹かごのことです。16mもの高さの山を築くためには、簣を用いて何十回も土を運び上げねばなりませんが、あと1回だけ運べば山が完成するのに、その前にやめてしまったら、目的を達成することができません。

ゴールが見えると、急にやる気をなくしたり、これまでの努力を継続しなくなったりする人がいます。しかし、勝敗の決定というのは、ゴール寸前の紙一重で決まることが多いのです。

たとえば、100mを走るのに、ゴールラインでぴったりと止まる人と、ゴールラインは通過点だと思って走り抜ける人と、どちらがいいタイムを出せるでしょうか? ゴールラインで止まる人は、それまでリードしていても、ゴールラインを走り抜けた人に、ゴールライン寸前で抜かれることになります。

もう一息の努力を継続しましょう。

孔子は、論語の中で、

子曰く、譬えば山を為るが如し。未だ一簣を成さざるも、止むは吾が止むなり。」と言って、あと一息で完成するという時にやめてしまうのは、自分自身のせいであり、他に責任を転嫁することはできないとしています。

ナポレオンも、

最も大きな危険は、勝利の瞬間にある」と述べています。

ゴール間近になって、手抜きをするようでは勝利をつかむことはできません。

ゴール寸前がいちばんきつい。

1976年、「一本足打法(世界のフラミンゴ)」と呼ばれる独特の打法をしていた王貞治選手が、前人未到の700号本塁打にあと1本と迫っていました。しかし、699本目を打ってから、700本まであと1本となってからというもの、20日間、7試合、29打席も本塁打が出ないという大スランプに陥ってしまいました。

相手のエース級のピッチャーは、「700本目だけは打たれたくない」と気合を入れ、王選手に対し、魂のこもったボールを投げ込みました。また、自信のないピッチャーは、躊躇することなく、敬遠で歩かせました。打席の王選手から独特のオーラが消え、「今夜こそ」と願う球場に通うファンはなんと3週間も待たされることになったのです。

そして、7月23日の昼、王選手の自宅に電話をかけたのは、「合氣の巨人」と言われた藤平光一氏でした。

藤平氏は、中村天風に師事して「心身統一道」を学んだ、「心身統一合氣道」の創始者です。以前、王選手に「心身を統一する方法」は教えていたのです。

その日の午後9時前に、王選手は700号のホームランをライトスタンドに叩き込みました。

そして、その3カ月後の10月11日、王選手は715号を放ちベーブ・ルースの記録(714本)を抜いたのです。

それから1年もたたない9月3日には、ハンク・アーロンが保持していた当時のメジャーリーグ通算本塁打記録の755本塁打を抜いて、ホームラン756本という世界記録を打ち立てました。その後の王選手の通算22年間の公式戦通算本塁打は、868本でした。なお、現在、メジャーリーグの通算ホームラン数はバリー・ボンズの762本塁打です。

王選手は1980年に引退しましたが、「ホームランが打てなくなった」と言った引退の年ですら、30本の本塁打を打っています。また、王選手の通算記録、1967得点,2170打点,2390四球,敬遠数427,出塁率0.446は、いずれも日本球界ナンバー1です。

あの王選手ですら、ゴール前には大きなプレッシャーで苦しんでいたのですね。

最後のひと踏ん張り

氷に熱量を加えると、温度が上がり、水となり、やがて湯となります。最後は沸騰し、蒸気と変わる(昇華する)わけですが、一般に、氷と水の境が0℃,水(湯)と蒸気(気体)の境が100℃とされています(気圧によって変化します)。

0℃の水1gを100℃の湯にするには、100カロリーの熱量が必要ですが、100℃の湯1gを100℃の蒸気に変えるためには、さらに560カロリーもの熱量がいります。0℃の水1gに絶え間なくエネルギーを加えても、659カロリーで止めてしまっては、蒸気になることはできません。

勝つか負けるかという勝負事では、最後の劇的変化が要求されます。水に限らず、金属でも、99.999%までに純度を高めると、全く性質を異にした物質になるそうです。

最後のひと踏ん張りには、多大な努力が必要なのです。しかし、このひと踏ん張りが出来るか否かで、大きな変化が引き起こせるかどうかが決まるのです。

同じゴールを目指しても・・・。

12月14日は、「南極の日」です。1911年12月14日は、ノルウェーの探検家ローアル・アムンゼンが人類史上初めて南極点に到達した日です。

アムンゼンは、南極点到達をイギリスの探検家スコットと争っていました。この2人の話は大変有名なので、結末をご存じの方も多いでしょう。

アムンゼンは先に南極点到達をし、無事に帰還した後、北極点到達も果たして後世に名を残しています。しかし、スコットの一行は、1912年1月17日、アムンゼンに遅れること34日後に南極点に到達しました。アムンゼンとの競争に破れたスコット一行は、引き返す途中で、氷の上で最期を迎えることになります。1912年3月29日がスコットの残した最後の日記でした。

さて、この2人を比較して、「アムンゼンは運が良かったのだ」とか、「スコットは悲劇の主人公だ」などと評されることもありますが、同じゴールを目指していても、この2人には大きな違いがありました。

まず、「やる気」が違ったということです。アムンゼンは酷寒の地の探検に備えて、体力作りやスキーの練習に余念がなかったのに対して、スコットはもともと海軍の提督になるつもりで探検家にはなる気がなかったのです。高校に行きたいと本気で思って勉強している生徒と、「みんなが行くから行く」とか「親が行けというから行く」というような考えの生徒とでは、勝負にならないのは当たり前です。

また、アムンゼンは、隊員たちにいちいち細かい指示をせず、指揮権を委譲していたのに対し、スコットの方は、イギリス海軍式の階級制度を用い、言われた命令に忠実に従うようにしていたといいます。「あれしろ」,「これしろ」と言われるままにしか行動しないようでは、指揮官のミスが命取りになるのです。勿論、指揮官の命令に従わなければ、チームは組めませんが、それぞれの隊員が「考える」細胞(スタッフ)でなければ、本当の意味でのチームワークは出来ません。

さらに、この2人には、「戦術」の面でも決定的な違いがありました。それは、ソリを引っ張るのに、アムンゼンが犬を使ったのに対し、スコットは馬を使ったのでした。寒さに強い犬と、弱い馬とでは、最初から話になりません。2人の結果は当然だったというべきでしょう。

同じゴールを目指しても、「やる気」のある人とそうでない人,言われるままにしか出来ない人と自分から考えて行動出来る人,「戦術」(方法)の正しい人と間違っている人とでは、差が出てくるのは当たり前です。

自分の進路に向けて、「やる気」をもち、自分から積極的に考えて、正しい方法で取り組むようにしたいものです。

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