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1-1 学級担任、成功のコツ

タイトル TAE1-1
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学級経営は傘(からかさ)の如し。

ナショナルの松下幸之助氏が「企業経営のコツを一言で教えてください。」と尋ねられ、「きみ、雨が降ったらどうする?」と逆に聞き返しました。

そして、「傘をさします。」と答えると、

そうでんな、それでよろしい。それが企業経営のコツです。」と返事をされたそうです。

松下氏をインタビューすると、こんなふうに逆に質問されることが多かったそうです。雨が降って傘をさすには、前もって傘の準備がいります。どんな時代の変化にも即応し得る企業体制づくりを先取りして行うことの大切さを、雨と傘の関係で譬えられたのです。

岩垣光定の「商人生業鑑(あきんどすぎわいかがみ)」という本に、

「時節を知りて、進むべき時に進み、退くべき時に退くを賢き人というなり。世渡りは傘(からかさ)の如くすべし。運よき時は開き、運よからぬ時はしぼめるがよし。」

という言葉が書いてあります。江戸時代、享保のゼロ成長経済の中で台頭し、生き残った商人たちは、合理的で、常に地道な商売を重ねながら安定した繁栄を目指しました。その商売の基本においたのが、この「傘商法」だったのだそうです。松下さんはこの話を引用したのでしょう。学級経営においても、どんな変化にも対応できるような体制づくりを普段からしておくことが大切だと思います。

「人生は筋書きのないドラマだ」といわれますが、学級にも様々なドラマがあります。ドラマというものは揉め事から成り立っているもので、トラブルが起きます。人間関係や仕事でも、うまくいっている間は能力や人間性はあまり関係ありませんが、トラブルが起きたり、失敗したりした時にどう対応し解決していくかで、担任の力量が試されるわけです。逃げずに、問題解決に取り組みたいと思います。そして、ハッピーエンドの学級ドラマのシナリオを作り上げましょう。

写真 温かい教室ニュージーランド

学級担任の仕事を分類・整理する。

学級経営とは、学級で行われる教育活動すべての教育活動をさしていますが、その主な内容を分類・整理すると、次の11項目に分けて考えられます。

1.生徒理解

2.基本的行動様式の定着化

3.問題行動に対する指導

4.道徳指導

5.特別活動

6.学習指導

7.進路指導

8.健康・安全指導

9.教室環境づくり

10.学級事務

11.家庭・地域との連携

学級経営の計画を作る。

学級担任を任せられた。担任として様々な思いがあるでしょう。

「さあ、今年は頑張るぞ。」と張り切っている人もいれば、「去年のような失敗はしたくない。」と慎重な人もいるでしょう。中には、担任を任せられたことに不満を持っている人もいるかもしれません。教師は、学級経営に失敗しても仕事を首になるわけではないし、またやり直しも利きますが、生徒にとっては1回きりの経験です。担任との出会いがその生徒の今後の人生を大きく変化させるかもしれないのです。その責任の大きさを認識し、最前線で生徒と接し、素晴らしいクラスを作って欲しいと思います。

いいクラスを作るにはいくつかのコツがあります。そのコツは、教師の成長とともに経験的に学んでいくことも多いのですが、そのために犠牲となっている生徒がいることを忘れてはなりません。いいクラスを作るコツを理論として知っておくことは、少ないエネルギーで最大の効果をあげるためにも必要なことです。

まず、これからの1年間に対する期待や希望,抱負などを単に意気込みだけで終わらせず、意図的・計画的に取り上げた指導の計画「学級経営案」をたてることが大切です。

部活動では、生徒たちは同じような目的や目標をもって集まってきます。特に運動部では、目前の試合に出場するとか、勝つという一つの目標に向かって、生徒たちのエネルギーを集約できるので、学級経営に比べ、部活動指導はしやすいものです。逆にいえば、部活動指導ひとつ満足にできない教師では、学級担任としての資質に欠けるといえるでしょう。厳しいようですが、私は、「3年間部活動を指導して何の成果も出せないようなら、学級担任をする資格はない」と言ってきました。

学級の中では、生徒たちは様々な願いや思いをもっています。それらをひとつの方向に向けてよりよいクラスを作るためには、やはり、具体的な「学級経営案」を作成するべきでしょう。教室の中に「校訓」や「教育努力目標」などが掲示されてあるクラスは多くありますが、「学級目標」が掲げてあるクラスは少ないようです。学級目標もないようなクラスは、荒波の中を漂う小舟のようなもので、行き着くところがなく、ただ沈没する運命を待つのみです。そんな学級に所属すれば、一番不幸なのは、生徒たちです。

「計画なきところに成功もなし」と言われます。年度当初の2,3週間くらいかけて、学級経営の計画を立てるようにしましょう。

なお、この学級経営の計画は、学期ごとに変更するのも、行事ごとに変更するのもOKです。また、うまくいかないと思ったら、柔軟に変更すればいいと思います。

学級経営案の作成

では、次に、学級経営案の内容・立て方・作成の手順について考えてみましょう。学級経営の成否に係わることですから、慎重に,かつ迅速に、決定しなければなりません。フレッシュな教師は勿論、ベテラン教師であっても、学級経営案は頭で漫然と考えるのではなく、文章や図表で記しておく方がいいと思います。

①学級経営案の内容

形式にこだわる必要はありません。学級目標の他、生徒理解の計画,個別指導の計画,生徒指導・学習指導の計画,集団指導の計画,道徳の時間や学級の時間の指導計画,家庭との連携・協力に関する計画などをしっかり押さえておれば十分でしょう。

②学級目標の立て方

学級目標には、

a)「明るいクラス」「温かく助け合うクラス」など学級像や生徒像を象徴的に示したもの,

b)「責任と実行」「友情と信頼」「協力と奉仕」など徳目的にいくつかの内容を示したもの,

c)「挨拶をしよう」「授業は真剣に」など生活・学習態度に対する心構えを具体的に示したもの,

の三つに分類されるでしょう。

いずれにしても、教師の意図と生徒の願いが一体的に示された実践目標でありたいものです。そして、それは、教室の一番目立つところに掲示され、年間を通してその達成に向けて生徒が参加しながら実践され、評価され続けなければならないものです。

③学級経営案作成の手順

学級経営案作成に際して最も重要なことは、学級の実態把握でしょう。個々の生徒の特徴を掴み、特に問題行動を持つ生徒やリーダーとなる生徒を知り、交友関係やいじめっ子・いじめられっ子がいないかなど、アンテナを高く張っておかなければいけません。また、家庭の経済状態,欠損家庭や不在家庭,教育的関心度など、家庭や地域の状態を掴んでおくことも大切です。

そして、学校の教育目標や努力目標,学年共通の課題とも同じような方向性をもつことが大切です。中学3年生のクラスで、「おもろかったらええやんけ!」と書かれた学級目標を掲げているクラスがありました。その学校では、生徒たちに我慢する心と他人を思いやる心を育てなければならないということが課題にあげられていたにも係わらず、このような投げやりな表現で書かれた文字を毎日毎日見ている生徒がどう育っていったか、想像がつくでしょう。教師の指導が殆ど入らない状態となり、生徒たちは自由勝手きままに行動し、学級崩壊状態に陥って、担任は心の病で降板するという事態になってしまいました。

また、学級経営案には、担任の指導観・教育観を十分に盛り込むことです。先ほどあげた「おもろかったらええやんけ!」のクラスの担任は、「生徒の自主性を重んじたい」という美辞麗句をモットーに放任主義を貫いていましたが、それは教師の仕事の放棄と同じことでしょう。生徒の現在のレベルをより引き上げ、具体的な目標を定めて、こういう生徒にしたいという思いを明確に示すことは、教師としての義務ではないでしょうか。そもそも、「任せる」ということは「責任をとる」ということと同意義だと思います。

4月当初、新しい学級にいる生徒たちの感情は様々です。「希望」「期待」「不安」「緊張」「満足」「不満」「疑い」「無関心」「孤独」「反抗」など、極めて多様です。この時期の学級は運命集団とよんでもいいでしょう。

4月の初めての出会い、担任第一声から学級経営の第1ページが始まります。そこでは、教師の人生観,人間観,あるいは哲学が滲み出るような話をしたいものです。できるだけの笑顔で、担任としての意気込みを伝えるようにしましょう。たとえ、持ち上がりの学年であっても、「昨年はよかったのに・・・」とか「昨年の反省に基づいて、・・・」などというマイナスの表現をしてはいけません。新しいクラスは、自分を「ヘンシン」させるチャンスだという話をし、夢と希望を持たせるようにしたいものです。

なお、4月中は、できるだけ、人間的な触れ合いの時間と場を積極的・意欲的に作り出すことが大切です。ホームルームの時間では、エンカウンター・グループを取り入れるのも効果的です。私は、4月、クラス作りによく椅子取りゲームを取り入れました。くれぐれも、事務的な煩雑さに追われ、見込み発車のないようにしましょう。

学級事務処理のコツ

「この世に『雑用』という『用』はなく、仕事を雑にした時に雑用となる。」・・・有意義な仕事にするか雑用にするかは心の持ち方次第だという人がいます。全く同感です。

担任が種々の教育活動を進めるに伴って、学級事務も付随して行わなければなりません。教育活動の効果を上げるためにも、学校という組織体の運営を円滑にするためにも、学級事務はおろそかにできません。提出期限を守らなければ、仲間の教師に迷惑をかけるだけでなく、結局は教師としての信頼をなくすことになるでしょう。信頼をなくした教師は、どんないい指導をしても、その効果は半減してしまいます。

なお、教師の中には、事務処理の締切りというと、夜中の12時までと思って仕事をする者がいますが、その後のまとめをする教師の仕事のことを考えれば、その日の遅くとも勤務時間まで、出来れば午前中に提出するという姿勢をもちましょう。

①段取りをする。

学級事務処理を迅速に,かつ合理的に行うコツは、「段取り」をすることです。事務処理の仕事は、年間を通して、ほぼ同じような時期に同じように行うことと決まっています。特に、学年始めと学期末・学年末に学級事務が集中するので、大きな流れと事務内容を知り、早め早めに取り組んでおくことが大事でしょう。

例えば、3学期の学級組織が決まれば、すぐに指導要録の学級委員や係活動の記入をしておけば、年度末の事務処理が少しでも軽減できます。

②優先順位を決めて行う。

一つの学級事務をしている間に、次々とやらなければならない事務が回ってきます。一度にやろうとすると無理が生じます。一つひとつ確実にしていく方が、ミスも少ないでしょう。その際に、大切なことは、優先順位を間違えないということです。

特に生徒に直接関係あることは優先しましょう。毎朝の出欠の確認,家庭連絡物の回収,調査事項の処理,明日の連絡,配布物渡しなどのミスは、学級指導だけでなく、学校運営にも支障をきたすことにもなりかねません。出張などで生徒より先に学校を離れる場合は、特に手落ちのないように注意することが大切です。

③記録の習慣をつける。

日常の教科指導,生徒指導,進路指導,特別活動など学級経営上の計画と実践,打合せや会議の記録,連絡事項のメモなどは,備忘のためだけでなく、結果の分析や新しい指針の資料としても重要です。できるだけ「指導手帳」として記録に残し、保管に十分注意しながら、常に手元に置くようにしましょう。

また、個人のパソコンを使って生徒の資料を保存するような場合には、データ消滅や盗難などの最悪の事態を予測し、そのデータ保管には万全を期すように心掛けましょう。

④文章管理システムを構築する。

学校現場ではたくさんの書類があります。クリヤーファイルや耳つきホルダーなどを利用し、ファイリングをして、自分なりの文章管理システムを構築するようにしましょう。

また、机上整理にも常に留意するようにしましょう。机上整理が出来ていないと捜し物に時間を取ることも多く、無駄な時間を費やすことにもなりかねません。

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