春風秋霜(しゅんぷうしゅうそう)
皆さん、おはようございます。
3月13日は三大勅祭のひとつ「春日祭」です。春の風を感じますね。
「春風秋霜」という言葉があります。
これは、江戸時代の儒学者、佐藤一斎が残した言葉です。
彼の著書「言志四録」の中に、
「春風接童 秋霜自粛」
とあります。
「春風(しゅんぷう)以(も)って人に接し、秋霜(しゅうそう)を以って自ら粛(つつし)む」と読みます。
「他人には春風のもつ暖かさで接し、自分には秋の霜のような冷厳さで反省して、自分の至らぬところを知る」という意味ですが、これは、人間関係処理の究極の言葉ではないでしょうか。
現代では、「人には優しく、自分には厳しく」というところでしょう。
私たちが人と接する時、自分に似た人や自分の心にぴったりくる人を求めたがるものですが、世の中、なかなかそんな人はいません。ましてや、人間的な幅の狭い人ほど、人に求めることばかりが多くなるものですが、自分に合う人はみつかりません。そこで、誰も自分のことを理解してくれないとか、自分は孤独だなどと逃避に走ることになりやすいのです。
人と人の交わりとは、お互いに違った個性と個性のぶつかり合うことです。そこには当然、摩擦が生じ、そのために自分の心も緊張し、集中しなければなりません。それによって、自分の性質も自覚され、特徴もはっきりしてくるものです。
人に求める前に、自分から相手につくすということをしていれば、自然と友が集まり、施しを受けるようになると思います。まず、春風を以って人に接することが大切です。
キリストの言葉には、こんな名言があります。
自分を愛してくれる者を愛したからとて、どれほどの手柄になろうか。
罪人でさえ、自分を愛してくれる者を愛している。
自分によくしてくれる者によくしたとて、どれほどの手柄になろうか。
罪人でさえ、それくらいの事はしている。
また、返してもらうつもりで貸したとて、どれほどの手柄になろうか。
罪人でも、同じだけのものを返してもらおうとして、仲間に貸すのである。
しかし、あなたがたは、敵を愛し、人によくしてやり、また何も当てにしないで貸してやれ。…」
(新約聖書「ルカによる福音書」第6章32~35節)
「言志四録」
佐藤一斎は、幕府の直轄機関であった「昌平坂学問所」の主宰者で、
「この人物が居なかったら、日本の夜明けは無かったかも知れない。」
と言われるほどの人物でした。
佐藤一斎の著書「言志四録」とは、「言志録」「言志後録」「言志晩録」「言志耋録(てつろく)」の全四巻を総称したものであり、内容は学問、思想、人生観など多義にわたり、修養処世の心得が1133条にわたって書かれた随想録です。
「言志録」は、佐藤一斎が42歳から53歳までの約11年間にわたって書かれたもので、246条からなり、1830年に刊行されています。
「言志後録」は、57歳から67歳までの約10年にわたって書かれており、67歳から78歳までの11年間にわたって書かれた「言志晩録」と一緒に、1850年に刊行されました。
そして、驚くことに、「言志耋録」は彼が80歳から82歳までの3年間にわたって書かれ、1853年に刊行されています。平均年齢50歳前後のこの時代にあって、佐藤一斎は大変な高齢で、「言志四録」を完成させたということがわかるでしょう。
また、昌平坂学問所の儒官となったのは、70歳の時でした。
門下生には、佐久間象山、渡辺崋山、山田方谷らがおり、彼の著書「言志四録」は、その後、幕末の西郷隆盛、勝海舟、坂本竜馬らにも大きな影響を与えたと言われています。
人を動かすために……
経営の神様、松下幸之助は、人を生かすこと一番大切なことは、「配慮」だと述べています。人に対する「配慮」「思いやり」「共感」がなければ、人を動かすことは出来ないと言っています。
では、配慮の出来る人間とは、どういう人なのでしょう?
佐藤一斎も、
「得意のこと多く、失意のこと少なければ、その人知慮を減ず」
と記していますが、人の痛みを知るには、失意の経験もまた貴重なものです。
挫折したこともない,病気したこともない,苦しみを味わったこともない,そういう順調な道を歩いてきた人は、悪意はないのだけれども、人間の弱さや辛さ,失意の時の人への思いやりや温かさなどが実感できなくて、つい人間味に欠けがちです。
松下幸之助は、自分には三つの財産があったと述べています。
①学校へ行けなかったこと
②健康に優れなかったこと
③決断に弱かったこと
だったそうです。
大きな失敗をした時、重い病気をした時、大切なものを不意に失った時、「そういう苦しみや悲しさは、自分が人を動かす大きな人間になれるチャンスを与えて頂いたんだ」と思える人が、最後に成功する人になれるのだと思います。
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