合格率10%
皆さん、おはようございます。
私が貧乏学生だった頃、車の運転免許を取るために教習所に通うと20万円が必要と言われていました。大学生になって最初にマクドナルドでアルバイトをして得た給料は時給400円。1日5時間働いたとしても、100日分に相当します。これは無理だと思い、車の運転免許を取るには、直接、試験場に行って、飛び入り試験で合格するしかないと思いました。
調べてみると、受験料は1,900円で、100点満点中70点で走れば合格ということでした。そして合格率は10%。当時、大型二輪免許の合格率が3%と言われていましたから、「これは10回行ったら合格できる!」と思いました。
バイクの原付→小型→中型の免許は、それぞれ、1回、1回、2回で合格していましたが、車についてはハンドルを握るのも初めてで試験場に行きました。
運転してすぐ「不合格です」と言われましたが、「ちょっとだけ練習させてあげる」と言われ、クランクやS字カーブ、車庫入れなどを試験中に練習させてもらいました。
結局、飛び入り試験で9回目に仮免許に合格しました。
その後、試験料1,900×9回+本試験1,900円=19,000円,2万円もかからずに私は自動車の運転免許を手にすることができたのです。「合格率10%なら10回チャレンジすれば合格する」と考えたことがよかったのだと思います。
(後でも述べますが、合格率10%の場合、10回チャレンジすれば、65.13%の確率で合格できることになります。)
成功率1%
さて、皆さんは成功率1%だということにチャレンジするでしょうか?
また、もし、子どもが成功率1%のことにチャレンジしたいと言ったら、どのようなアドバイスをするでしょうか?
成功率1%ということは、100回挑戦すれば1回成功するわけです。その1回の成功が人生のすべてを変えることもあるかもしれません。
しかし、1%の成功率だったら、やめた方がいいという人の方が圧倒的に多いでしょう。特に教師や親は、子どもが成功率1%のことにチャレンジしようとした時、確率で正論をかざしてしまいがちです。
成功率1%の場合、試行回数が1回なら、1%の確率で成功なので、成功はほぼ見込めません。
また、試行回数が2回ならば、99%×99%=98.01%が失敗なので、成功する可能性は約2%です。
同じように、試行回数が3回ならば、99%の3乗=97.03%が失敗なので、成功する可能性は約3%です。
そして、試行回数が10回ならば、99%の10乗=90.44%が失敗なので、成功する可能性は約10%です。
しかし、試行回数が69回になると、99%の69乗=49.98%が失敗なので、成功する可能性は半分を超えます。
試行回数が100回になると、99%の100乗=36.60%が失敗なので、成功する可能性は約63%、なんと、約3分の2です。
さらに、試行回数が459回になると、99%の459乗=0.99%が失敗なので、成功する可能性は99%を超えます。
ただ、試行回数がいくら増えようと100%成功するとはいきませんが、試行回数が917回になると、99.99%を超えますから、野球でいう1000本ノックというのも、意味あることだと思います。
これが、成功率が3%、5%、10%ならば、さらに試行回数が少なくて成功する確率は高くなります。表にするとこんな感じです。
試行回数はとても大事ということです。
ちなみに、成功率が1%、3%、5%、10%、30%の場合について、試行回数による成功の可能性を表にしてみました。
3割バッター
ところで、野球のバッターでも、プロバスケットの選手でも、ヒットやシュートの成功率が3割を超えると一流選手と言われます。しかし、よく考えてみると、3割ということは、10回のうち7回も失敗しているのです。七転八起どころか、半分以上失敗しても、気にせず次々とチャレンジしていく姿勢がないと、一流にはなれないのです。
3割バッターで大リーグで活躍したイチロー選手は、こんな言葉を残しています。
「4000安打を積み上げるまでに、8000回以上悔しい思いをした。」
失敗した度に悩んでいては、時間がもったいないのです。
子どもが成功率の低いことにチャレンジしようとした時、正論は子どもの試行回数を減らし、いとも簡単に子どもの可能性をつぶしてしまいます。子どものためと思って正論をかざした時、子どもの希望ややる気も剥ぐことになっていないか、点検が必要です。
世界の発明王エジソンの発明の中で、最も大きな功績は電球の発明でしょう。彼は今でいうフィラメントやタングステンなら明かりがつくということを発見するまでに、なんと6,000回の失敗を繰り返したそうです。また、エジソンはインタビューにこんな答えをしています。
「5,000回も失敗した? そんな事はないよ。5,000通りのうまくいかない方法を発見するのに成功したんだから!!」
失敗から立ち直るのが人生
人間は一生の間に1,000回転ぶといわれます。転ぶと痛いでしょう。その代わり、立ち上がるたびに大きな人間になるのです。ただ、ひと回り大きな人間になれるのは、立って前に歩こうとする人だということを忘れてはなりません。
失敗は成功の逆ではありません。失敗から立ち直るのが人生なのです。
アメリカの教育者、マーフィーは、
「失敗は成功の第一歩です。失敗したことを喜びなさい。」
と述べています。
思い込みや直感に頼らない。
思い込みや直感を大切にしている人がいますが、あまりそれだけに頼るのはよくありません。
例えば、私とあなたの誕生日が一致する可能性は、1/365×1/365×365なので、0.27%の確率しかありません。また、ある集団の中で100%、誕生日が一致するには、1年366日(うるう年)+1=367人の集団がいれば間違いありませんね。
では、40人学級の児童生徒の集団の中で、誕生日が一致する者がいる確率は何パーセントでしょうか、即答で出してみてください。
3人の集団であれば、2人の組み合わせは3通りあります。3人の誕生日が一致しない確率は、364/365の3乗、すなわち、364/365×364/365×364/365ですから、99.18%となります。したがって、3人の集団の場合は同じ誕生日の人がいる可能性は1-99.18%=0.82%という計算になります。
同じように考えると、40人の集団であれば、2人の組み合わせは780通りあります。2人の誕生日が一致しない確率は、364/365の780乗ですから、11.77%となります。したがって、40人の集団の場合は同じ誕生日の人がいる可能性は1-11.77%=88.23%となります。すなわち、40人学級では、ほぼ9割の確率で同じ誕生日の人がいるということです。
集団の人数が増えると、当然、誕生日の一致する確率も上がります。
42人の集団では、90%を超え、83人の集団になると、99.99%を超えるのです。
つまり、366人という大きな集団でなくても、2クラスほどの児童生徒がいれば、ほぼ100%、同じ誕生日の者がいるということになります。
これをグラフに表すとこんな感じになります。
「寅さんの教育論」
映画監督の山田洋次氏は「寅さんの教育論」でこんなことを述べています。
「学びたいという生徒がいて、教えようという先生がいればそこに学校が成り立つ。学ぶと言うことは喜びであるはずだし、教えると言うこともまた喜びでなければならない。」
決して、その教えることは正論でなければならないわけではありません。
京セラの創業者で、日本航空の名誉会長も務める稲盛和夫氏は、人生で成功する方程式を、「人生の結果=考え方×熱意×能力」という方程式で述べています。この中で最も大きな要素は「考え方」です。
イギリスの劇作家であり、詩人だったウィリアム・シェイクスピアは、
There is nothing either good or bad, but thinking makes it so.
という言葉を残しています。
同じように、「経営の神様」と言われた、PHP代表で松下電器創業者の松下幸之助氏も、
「世の中には幸福も不幸もない。ただ、考え方でどうにでもなるのだ。」
と述べています。
教育者の避けたい考え方
最後に、教育者がしてはいけない考え方を述べたいと思います。
「心に響くMOVIE」というネットに、「避けたい10の考え方」というのが載っています。
1.完璧主義
2.過去を後悔する。
3.未来を心配する。
4.他人に期待する。
5.頑張っても無駄
6.ネガティブ思考
7.自分を批判する。
8.0か100かの思考
9.他人を否定する。
10.〇〇べき思考
これらは全て、人間の可能性の芽を摘む行為です。そして、その背景にあるのが、“正論”だと思われることです。
「可能性1%だからやめなさい」というのは簡単ですが、思い込みや直感、あるいは経験だけに頼らず、その人を見て、状況をよく考えてアドバイスするようにしましょう。
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