はじめに
陸上競技は,全力を出して競走したり,記録を向上させたりすることに喜びを見いだすことのできるスポーツである。自己の能力に適した課題や目標を設定し,走り方や跳び方を工夫することで,達成感を味わうことができる。
学習指導の様相(授業への意図)
短距離走,走り高跳び,走り幅跳び,障害走は,いずれも歩数・歩幅の調整が課題となる。
【短距離走】
速度は,歩数(ピッチ)と歩幅(ストライド)の積で表される。
速度[m/秒]=歩数[歩/秒]×歩幅[m/歩]
すなわち,短距離走のタイムを縮めるには,歩数を多くするか,歩幅を増やすことがポイントとなる。例えば,100mを13.6秒,54歩で走ったA君が,練習の結果,12.8秒,52歩で走れるようになった場合,A君は,歩幅で61.3%,歩数で37.0%のプラスをして,速度を0.46m/秒高め,タイムを上げたと考察される。そこで,短距離走タイムと歩数の測定をし,速度,歩数,歩幅を計算させ,その変化を客観的に把握させる。
また,次の計算式によって,自分の目標を明確に設定する。
【走り高跳び】 120+(身長㎝)÷2-t×10
【走り幅跳び】 3年男子 880-(62×t) 3年女子 840-(60×t)
【障 害 走】 t×1.2 ※tは50走タイム(秒)
<得点換算表>(走り高跳びの評価例)
男女別・運動能力別に4~5人の異質グループ(グループ内等質)を作る。
学習のねらい(目標)と道すじ
(1)学習のねらい
○短距離走 :自分に合った歩数と歩幅を調整しながら,より速く走ろう。
○走り高跳び:安全な跳び方(ベリーロール・はさみ跳び・正面跳び)で,7~11歩 助走を生かし,より高く跳ぼう。
○走り幅跳び:自分に合った助走距離を決め,踏切線に合わせて,より遠くに跳ぼう。
○障 害 走:自分に合った3歩助走のハードリングで50mをより速く走り抜こう。
(2)学習の道すじ(共有課題)
つかむ・・・50m走のタイムと歩数を測定し,課題や目標を設定しよう。
深める(ねらい➀)・・・より速く,より高く,より遠くに,記録を伸ばすことをねらいとしてさまざまな練習方法を取り入れ,自分に合った練習を工夫しよう。
確かめる(ねらい②)・・・と歩幅を調整しながら,記録の向上を目指そう。
身につける・・・記録会を行い,互いに評価し合おう。
時間配分
はじめ(2時間) オリエンテーション 50m走測定
な か(8時間) ねらい➀ ねらい②
まとめ(2時間) 記録会 自己評価・他者評価
成果と課題
(1)成果
自己記録への挑戦を繰り返す中で,あきらめず自分の可能性を伸ばそうとする意欲が高まった。
また,記録の向上とともに走ることに興味を持ち,練習にもさまざまな工夫が見られるようになった。3年生の受験期の生徒たちにとって,意味ある授業となったようである。
(2)課題
陸上競技の基本である「走る」という運動は,生涯を通して付き合える要素がある。今後,健康と体力の保持・増進を積極的に日常の生活に取り入れるように,指導していきたい。
参考資料
参考写真(50m走)
足跡にマークを置き,歩数を数えるとともに,自分の走った跡を確認する。
[写真A 足跡をマークしよう]
[写真B 左に傾きました]
[写真C 右に傾きました]
[写真D 紆余曲折しました
短距離走・歩数(ピッチ)と歩幅(ストライド)の調整
エクセル計算表
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