フォロワー教師 & サポーター教師
-「指導」か「支援」か-
教師五者論
皆さん、おはようございます。
「教師五者論」というのがあります。教師は時として、「学者」「医者」「役者」「易者」「芸者」になり、総合的な人間力を身につけなければ、本物の「教育者」とはいえないという説です。
①学者:学者のように学べ。
②医者:医者のように生徒を診よ。
③役者:役者のように生徒を魅了せよ。
④易者:易者のように生徒の未来を見よ。
⑤芸者:芸者のように生徒に寄り添え。

学校現場の周りの先生を見渡すと、大きく2つのタイプに分けられるように感じます。
〇児童・生徒のことが好きな先生
●児童・生徒のことが嫌いな先生
教師たる者が児童・生徒のことを嫌いだということがあるのかと思うかもしれませんが、嫌うどころか、実は、憎んでいる先生もいます。
「好きこそものの上手なれ」という諺がありますが、教師の仕事に意欲を感じられない先生は、児童・生徒のことが嫌いになっているケースが多いようです。
ただ、好き嫌いという感情は、職場が変わったり、対象が変わったりすることで変わりますから、児童・生徒のことが好きになれるように先生をサポートすべきだと思います。
そこで、次の教師の分類は、「フォロワー教師」か「サポーター教師」かです。
「フォロー」というのは、足りない部分や失敗した部分を後から補うこと,一度終わった後も更に見守ったり、何かあれば対応したりすること,基本的に、人の後に続き、その人がしたことを補うこと,です。
一方、「サポート」というのは、支持・支援することで、相談窓口という意味で使われます。基本的に、ある人がきちんとやっていけるように支援すること,釣った魚を提供するのではなく、一人で魚が獲れるよう釣り方を教えていく,ということから、「コンサルティング」と同意でしょう。
「指導」か「支援」か?
さて、児童・生徒に対して、教師は「指導」者であるべきでしょうか、それとも「支援」者であるべきでしょうか?
1.学習指導の場で(知的障害児童生徒に対して)
①授業で「1円玉を5枚で5円になる」ことを理解させる練習を行う ⇒ 「指導」
②買い物学習に行く際、混乱しないように事前に写真カードを使って商品を選ばせ、やり取りを練習する ⇒ 「支援」
2.自立活動の場面で(肢体不自由のある児童に対して)
①車椅子を使って移動する際の安全な運転方法を授業の中で教える ⇒ 「指導」
②廊下が混雑する時間を避けて移動できるよう時間を調整したり、スロープ使用時に教職員が付き添う ⇒ 「支援」
3.コミュニケーション(重度重複障害のある児童に対して)
①スイッチ教材を使って「はい・いいえ」の意思表示を練習する ⇒「指導」
②授業中に表情や視線から意思を読み取り、教師が代弁して周囲に伝える ⇒「支援」
4.生徒指導面(自閉スペクトラム症のある児童に対して)
①「順番を守る」「話を最後まで聞く」といった社会的ルールを道徳授業で行う ⇒「指導」
②列に並べない児童に対して、立ち位置を色テープで示す ⇒「支援」
このようにみると、「指導」は、子ども自身の力を引き出し「できるようにする」ことが目的であり、「支援」は、その子どもが安心して学び、生活できるよう、「環境や方法を整える」ことが目的といえるでしょう。
「指導」と「支援」の違いをまとめてみると、次のような表になります。

緊急指導・緊急支援
さて、学校で暴れている児童・生徒に対して、どのような「指導」や「支援」をすればいいのでしょうか? また、どのような行為が「支援」となりうるのでしょうか?

1.暴れる生徒を力づくで制止
まず、暴れている児童生徒に対して、不必要な制止をすることで起こり得る事案を考えてみましょう。
■「体罰」
暴れる児童生徒を教師がきつく抑え込んだ際、例えば、あざを作ってしまったとか、けがをした場合、「体罰」となり、場合によっては「傷害罪」になるケースがあります。当然、
当該教師は懲戒処分となり、傷害罪に問われた場合は逮捕されます。
また、最近では、「暴言」や「行き過ぎた指導」も、懲戒処分の対象となっています。
ちなみに、懲戒処分には、程度によって、免職、停職、減給、戒告の処分がありますが、たとえば、30歳の教師が体罰で3か月10分の1の減給処分を受けた場合、生涯賃金では約400万円の損失となります。
■「対教師暴力」
暴れている児童生徒に、その意思がなかったとしても、制止しようとした教師を殴ってけがをさせてしまった場合、対教師暴力反抗となるでしょう。
これまで身近に起こった事案では、暴れて教師の眼鏡を壊してしまい、8万円の損害賠償を支払った生徒がいました。また、暴れた際に教師の足を蹴って靭帯を損傷するけがを負わせ、鑑別所に入所して審判を受けた生徒もいました。
■「器物損壊」
暴れて物を壊すというのはよくあるパターンです。その時、特に気をつけなければならないのは、例えばガラスを割って手を切るなど、自傷・他傷です。
■「教師不信」
暴れている児童生徒を力づくに抑え込んだからといって、その教師い対して信頼感を持てるかというと、その反対で、不信感を買うことの方が多いように思います。
■「不適切な指導」
やはり、いくら児童生徒が暴れているからといっても、力づくで抑え込むことは、適切な指導とはいえません。仮に一度抑え込んだからといって、二度三度起こらないという保証はありませんし、成長して力が強くなると、ますます抑え込むことは困難になるでしょう。
小学校時代力づくで抑え込む不適切な指導をしたために、中学生や高校生になって手をつけれなくなったというのはよくあるケースです。
■「不登校」の誘発
暴れる児童生徒を力づくで抑え込んだ後、「学校は楽しくない→行くのが嫌だ」と不登校になるケースも多々あります。
また、暴れた児童生徒本人だけでなく、そのような場面を目撃した児童生徒たちが、「あの先生は怖い→学校に行きたくない」と不登校になるケースもあります。
2.暴れる生徒への適切な対応とは・・・?
暴れる児童生徒を見つけた場合、まず、状況を冷静に把握し、安全を確保した上で、生徒の気持ちに寄り添い、状況に応じた適切な対応をすることです。
①状況を冷静に把握
②安全確保;安全な場所へ移動、安全な距離
③周囲の協力・応援
④生徒の気持ちに寄り添う。
⑤継続的なサポート
⑴体罰は厳禁(大声、暴言も含む。)
⑵複数の教師で対応
⑶個人の秘密厳守&情報公開
⑷記録をとっておく。
⑸専門機関への相談

3.事例(失敗例と成功例)
これまで私が経験した暴力事案で、印象に残っているもので、失敗例、成功例を紹介したいと思います。
(1)暴れる生徒への対応事例① ⇒「失敗」例
昭和●年●月●日、放課後、中学3年生の廊下を通りがかったところ、1人の生徒を5人の生徒で集団暴行している場面に遭遇した。大声で制止したところ、中心的存在だったA男から逆にナイフを突き付けられたので、ナイフを蹴り飛ばし、柔道技をかけてそのA男を投げ飛ばして抑え込んだ。
A男を投げ飛ばした後、集団暴行をしていた生徒たちは戦意を失って逃げ出したので、暴行を受けていた生徒は解放されました。しかし、顔面を何度も殴られていたうえ、手指を骨折していたので、被害届を出して、暴行した生徒たちは補導されることになりました。特にA男はこれまでの非行歴もあったので、鑑別所送付となり、少年審判を受けて保護観察処分となりました。
ただ、それだけでは終わりませんでした。私にナイフを突きつけたので投げ飛ばしたA男も、投げられた際に打撲傷を負ったということで被害届を出したので、暴行罪容疑で私も事情聴取されたのです。結果としては不起訴でしたが、いくら身の危険を感じたからといっても、ナイフを突きつけられたくらいでは正当防衛は成立せず、けががひどい場合は傷害罪で逮捕となるところでした。
(2)暴れる生徒への対応事例② ⇒「失敗」例
平成▲年▲月▲日、中学3年生のK夫が担任の指導にキレて、担任を殴り、机や椅子を投げつけて大暴れした。K夫は柔道部の重量級の選手で、力も強かったことから、4人の男性教師で抑えにかかり、廊下で押さえつけて、警察に通報した。
警察に逮捕されたK夫は、48時間拘留を受けた後、学校に戻ってきました。しかし、何の反省もなく、その後も同じように暴れることが続きました。何度も警察に通報するわけもいかず、暴れた時は、被害が落ち着くまで待つしかありませんでした。その間、何人もの生徒や教師がケガをし、モノが壊れました。
また、最初に教師たちでK夫を抑えにかかった際、T教師は眼鏡を破損したので、8万円の損害賠償をK夫に請求しました。しかし、そのことがトラブルになり、結局、T教師の泣き寝入りとなりました。
(3)暴れる生徒への対応事例③ ⇒「成功」例
令和■年■月■日、特別支援学校の高等部1年の校舎で、Kさん(女子生徒)が授業中の指導不服従からパニックを起こし、机や椅子を押し倒して暴れていた。ちょうど、私は授業参観に来たところで、G女性講師が馬乗りになり、髪の毛をつかんで床に抑え込み、制止していた。
私はすぐに周りの机や椅子など危険なものを片付け、G講師とKさんに声をかけて、制止を解きました。Kさんに落ち着くように声をかけ、カームダウンルームに連れて行って、じっくり話を聞いてあげました。
G講師は、生徒にバカにされたことに納得ができず、その年、教職を去りましたが、この事件後、Kさんとの関係は最後まで修復されませんでした。
Kさんは「男性教師が苦手」ということで中学校から連絡を受けていた生徒でしたが、この事件をきっかけに、私には非常に心を開いてくれるようになりました。
(4)暴れる生徒への対応事例④ ⇒「成功」例
令和◆年◆月◆日、中学部の教室で、Mさん(男子生徒)が鼻血を出してパニックを起こし、暴れていると職員室に応援の連絡があった。数人の教師で駆け付けたところ、O講師が柔道の寝技をかけ、鼻血を出したままのMさんを床に抑え込んでいた。
鼻血を出したままのMさんは、抑え込まれたことで余計に興奮状態になっていました。私は、まず、Mさんの止血をし、O講師の寝技を解きました。一緒に駆け付けた教師に、周りにいた生徒たちや危険物を移動するように指示するとともに、Mさんと手を繋いで落ち着くよう抱きしめ、声をかけました。
O講師には、暴れた生徒を不必要に抑え込むことで自分がケガをして対教師暴力事件になったり、逆に生徒にケガをさせて傷害罪に問われたりすることもあるので、今後は気を付けるように指導しましたが、「これまでもこうしてきたから!」と言って聞き入れませんでした。しかし、その後、Mさんとの関係は完全に崩壊し、O講師が授業に来ると、Mさんが暴れたり、教室を飛び出したりすることが続きました。
反対に私との関係は大変よくなり、次の年、新しい担任が来て指導に困っていた時にも、Mさんは私の手をとって、自分の気持ちを落ち着かせるように努力していました。ちなみに、Mさんは体重100㎏近くの巨漢で、何人もの教師が支える際に腰を痛めていました。知的障害が重く、言葉はある程度理解できますが、話すことのできない生徒でした。しかし、私には心を開いて、指導にもよく従ってくれていました。
「支援」とは・・・
ところで、一般に、カウンリングの際には、次の6つの技法が使われます。
(1)「リソース」探し
リソースとは、その人が持っている資源「あるもの」です。性格、能力、興味・関心、得意なこと、家族、友人、クラス、経験、知識などに目に向けることが重要です。
(2)ゴール(目標・めあて)設定
肯定的表現で、「~しよう」「~したい」と提案します。
(3)ミラクル・クエスチョン
例えば、「ある晩、眠っている間に奇跡が起こり、今、悩んでいることがすべて解決していたとします。そうすると、その日一日はどんな日になると思いますか?」というような質問を投げかけます。
続いて、「どんなところから、“うまくいっている”ということに気づきますか?」という質問をし、自発的に解決策を発見させます。
(4)スケーリング・クエスチョン
「一番悪い時を0点。一番良い時を10点としたら、今は何点ですか?」というふうに、点数化することで、問題性の重さを明確にします。
(5)例外探し
問題が起きている状況だけでなく、問題が起きていない、または軽減されている例外的な状況に焦点を当て、その原因や要因を探る手法です。
これにより、クライエントが持つ潜在的な資源や強み、解決へのヒントを発見し、より効果的なカウンセリングにつなげることができます。
(6)リフレーミング
物事の捉え方(フレーム)を変えることで、感情や行動に変化をもたらします。
ネガティブな状況を別の視点から見たり、異なる解釈をすることで、より前向きな気持
ちや行動を促すことができます。
ただし、その際、「他人と過去と感情は変えられない」ので、「自分と未来と行動を変え
る」ように導きます。
実は、児童・生徒を「支援」するには、これらのカウンセリングの手法が必要なのです。
「指導」には、これらの手法は必要ありません。決して「指導」と「支援」は相反するものではありませんが、車の両輪のようにお互いになくてはならないという関係ではなく、「指導」は「支援」に内包されるものと捉えるべきだと思います。

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まとめ
教師は時として、「学者」「医者」「役者」「易者」「芸者」になり、総合的な人間力を身につけなければなりません。
学校現場の先生は、児童・生徒のことが好きな先生と嫌いな先生に二分されますが、「フォロワー教師」か「サポーター教師」かにも分類できます。
また、暴れる児童・生徒に対して、教師は「指導」者であるよりも、「支援」者であるべきです。力づくで制止すると、様々なトラブルが発生します。
そして、「支援」には、カウンリングの技法が必要です。
