日本の子供たちに求められている力とは・・・

子供たちがこれからの変化の激しい社会を生き抜くために、学習指導要領では、「生きる力」が必要であるとしています。そして、具体的には「資質・能力の3つの柱」として整理された以下の3つの力を示しています。

単に事実や用語を暗記するだけでなく、それらが互いに結びつき、実際の生活や社会の個別の場面で活用できる、生きて働く「知識・技能」です。

習得した知識や技能を使い、予測困難な事態や未知の状況にも柔軟に対応し、課題を解決していく力です。

学んだことを「どのように社会や人生に生かしていくか」という態度や、主体的に学び続ける姿勢、多様性を尊重する人間性を指します。

 さて、これらの学力は、学校だけで高められるものなのでしょうか?

「秋田に学べ」

2008年から全国学力テストが実施されてきました。

開始早々2年連続トップになった県は、秋田県でした。秋田県は、所得水準も大学進学率も全国47都道府県の中で40位前後、塾に通う子どもの割合も極めて少ない県です。ちなみに、東京の小学6年生は2人に1人が塾に通っているのに対して、秋田県では5人に1人です。

秋田県が全国1位の学力を誇るのは、秋田県では少人数指導が徹底しており、算数の授業などは習熟度別にクラス分けをするなど、きめ細かい教育が行われていること,算数や数学では県の教育委員会が独自に単元ごとの「定着テスト」を作っていること,補習をよく行っており、宿題が多いこと,定期的に学級だよりを発行して、学校の様子を家庭によく知らされていること,教師を尊敬する気風が残っており、保護者と教師の間に信頼関係が確立していること,などが原因だろうと分析されています。

しかし、それだけではないと思います。小学5年生と中学2年生を対象に実施された全国体力テストの結果をみても、秋田県の小学生は全国トップクラスなのです。ちなみに、体力テストの全国1位は福井県で、福井県の学力テストは全国2位です。

大阪の知事が、大阪府の学力テストが全国下位にあることを問題にし、「せめて勉強ができないなら、運動くらいできるはずだ」などと言って物議を醸したことがありましたが、残念ながら、学力テストと体力テストの結果には高い相関関係が認められています。

では、秋田県や福井県の子どもたちが、学力や体力に優れるのはなぜでしょうか?

それは、東京や大阪の子どもたちと比べて、早寝早起きをし、朝食と夕食を両親や家族と一緒に規則正しく摂っている傾向が顕著にみられることが大きな要因です。秋田県も福井県も、三世代家庭の割合が多く、所得は低くても、家庭に始まって家庭におわる生活が根強く残っています。享楽的な誘惑も少なく、家族団欒の時間も長いので、宿題を家でしやすいのです。

「早寝・早起き・朝ごはん」など、基本的な生活習慣を見直したいものです。

受験には中学1年生から(金をかけて)準備せよ。

大変荒れた学校に勤務していた時にいた2人の教え子(男子生徒)の話をしましょう。

①T君の事例:塾に力で高校合格

T君は、中学1年生の時から、授業は受けない、周りの生徒や先生とのトラブルは日常茶飯事、バイクを乗り回しては逮捕されるという、大変な問題生徒でした。しかし、どういうわけか、1年生の時から週2回の塾にだけはきちんと行っていました。塾の先生がよかったのか、親の教育が厳しかったのか、その理由はわかりません。

こんなこともありました。他校生とトラブルをおこし、双方、謝るということになって、放課後に学校で謝罪の場を設けました。一応、謝罪の儀式が終わって、担任の先生がそれぞれに指導をしようとしたところ、T君は、「俺、今日、塾があるから帰るわ」と言って、担任が止めるのもきかず、さっさと塾に行ってしまったのです。

T君は、公立の高校を受験しました。受験の当日も、試験会場で他校生とメンチを切ったといって殴り合いの喧嘩をするなどのトラブルを起こしましたが、ちゃっかりと合格し、公立高校に進学しました。

中学時代、彼と同じように行動していた者で、公立高校に進学した生徒は誰一人いませんでした。彼だけが公立高校に進学できたのは、塾だけは休まず行っていたからでしょう。

➁K君の事例:中1年での不勉強が原因で高校不合格

K君。中学1年生から2年生の前半までは、T君と共に行動し、ありとあらゆる問題行動をしていました。しかし、中学2年生の夏休みを過ぎた頃から、急に授業に真面目に取り組むようになりました。T君との交流は続いていましたが、一緒に問題を起こすことはほとんどなくなりました。ただ、家庭的に塾に行くことはできませんでした。

中学3年生でも真面目に生活をし、公立の商業高校を受験することになりました。

内申点も十分あり、合否判定はAでした。しかし、受験の前日、私のところにきて、こんな事を言うのです。「俺は、先生のお陰で中2の時からちゃんと勉強するようになったけど、中1の時に真面目にやってなかったから、中1の勉強がわからへんねん。明日の入試は、中1の範囲も出ると思うから不安なんや。」

私は「余計な心配はするな」と一蹴して、K君を受験に送り出しましたが、発表が気になり、一緒に見にいきました。すると、10人受けていた生徒の中で、彼だけが落ちていたのです。彼の内申点は、その10人中上から2番でした。「まさか」と思いましたが、彼の心配が的中してしまったのです。

塾に行かせて欲しいはいいません。ただ、高校進学に向けて、中学1年生の時から準備を進めておいて欲しいと思います。

学校 vs 塾 vs 家庭

さて、本題です。

「学校」と「塾」と「家庭」での教育は、どうあるべきなのでしょうか?

ある調査によると、現在、小学生の低学年(小1〜3)では約2割弱、高学年(小4〜6)で約3〜4割。文部科学省等の調査では公立小6年で約44%が塾に通っています。

中学生でも学年とともに通塾率が上がり、中3では約5割〜6割後半、高校受験を控えた層では8割に達するというデータがあります。

もはや、「学校の教え方が悪いから塾へ行く」とか、「家庭でしっかり教えれば塾はいらない」というように、学校と塾、塾と家庭は敵対関係にあるのではありません。

子供たちが「一生学び続ける力」をつけるために、学校・塾・家庭は、それぞれ異なる役割を担い、子どもの成長を支えるチームであるべきだと考えます。

「学校が全部教えてくれるはず」とか、「塾へ通わせれば安心だ」とか、「家庭だけで何とかしなければ・・・」というように、一つの機関へ過度な期待を寄せると、どこかに無理が生じるでしょう。

塾の功罪

塾の種類

ところで、一口に「塾」といっても、様々な形態があります。

〇補習塾
 学校の授業を補う勉強に取り組むため

〇進学塾
 進学を目指して学力を向上させるため

〇総合学習塾
 補習塾と進学塾の両方の役割を持った塾

〇予備校
 主に高校生や高卒生が大学受験合格のため

〇習い事
 「水泳」「体操」「ピアノ」「英会話」「ダンス」「習字」「そろばん」「プログラミング」「柔道」「剣道」「野球」「サッカー」「バレーボール」などの習い事やスポーツも塾の一種でしょう。

寺子屋

さて、日本の塾の源流は、江戸時代に庶民の子どもへ読み書きや計算などを教えた「寺子屋」があると言われています。

武士の子弟を対象に儒学、漢学、武芸、兵学などを教えていた「藩校」と違い、「寺子屋」は、庶民(農民・町人の子ども)を対象に民間人が運営し、主に、読み(読書)・書き(習字)・そろばん(算術)を中心とした基礎的な学習や実生活に必要な知識を教えていました。また、往来物と手紙の書き方など、実用的な知識が個別に指導されていました。

先生は町人や農民などの平民、浪人武士、僧侶、医師などが多かったようです。また、女性の先生も多く存在していたようです。

使用されていた教科書には以下のようなものがありました。

・庭訓往来(ていきんおうらい)
 室町時代に成立し、江戸時代に庶民の間で最も普及した基礎教養・手習いの教科書

・商売往来(しょうばいいおうらい)
 商業に必要な商品名や貨幣、商人生活の心得を学んだベストセラーの往来物

・塵劫記(じんこうき)
 吉田光由が著した、九九や金銀の両替、実生活の算術を学んだ入門書

・小野篁歌字尽(おのののたまことばじづくし)
 漢字の学習や暗記に用いられた、共通する偏や旁の漢字を歌に合わせた人気の教材

・実語教(じつごきょう)・童子教(どうじきょう)
 道徳や倫理、生きていくための心構えを教えるための教科書

実語教

タイトル 教育史・教科書
日本の教育史・教科書(学習指導要領)から、これからの教育を考える。日本の教育史・教科書から、これからの教育を考える。...

塾に通うメリット&ディメリット

次に、塾に通うことのメリットとディメリットを考えてみましょう。

ただ、学校の先生は多忙なため、なかなか教材研究や授業研究だけに時間を割くことができないので、「教える」ことだけに特化していえば、学校の先生より塾の先生の方が上手いと感じています。

ある予備校で、有名な講師による大学受験のための世界史の授業を受ける機会がありました。一般的に世界史と言えば、覚えることが大変多く、受験生泣かせの教科ですが、この授業を聞いていると、一度聞いただけで、なんでもスーと頭に入ってきます。本当に素晴らしい授業だと思いました。

また、ある大手予備校の通信教育の授業を受ける機会もありました。これもまた大変素晴らしい授業で、画面に吸い付けられるように見入ってしまいました。もっと通信技術が進めば、全国一斉に3D等を使って、よりリアルな空間で授業を配信できるかもしれません。そうなれば、教師の力量や地域差によることなく、優れた授業を全国どこでも受けることができるようになるだろうと思いました。

さらに今後、AIをどんどん取り入れて一人ひとりの進度に応じて授業を受けることができるようになれば、極端な話、学校で「教える」先生は要らないという時代になるかもしれません。

チームとして子供を育てる!

スポーツの世界でも、選手を育てるのに、監督とコーチがまちまちの指導をしていては、選手は伸びません。

家庭においても同じことで、父親と母親、もしくは父母と祖父母が子育てにおいて相反することをしていると、子供がすくすくと育つことはできないでしょう。

子供は無限の可能性を秘めていますから、多様性の中で子供を教育することは大切です。いろんな子育てや教育があっても構いません、しかし、決して、選択肢を限定するということではなく、子供に関わる「学校」、「塾」、「家庭」あるいは「地域」が、一つのチームとして連携し合い、役割を担っていく必要はあると思います。

そのための話し合いや交流が求められている時代なのです。

子供たちはこうして生きかたを学びます。

批判ばかり受けて育った子は、非難ばかりします。

 敵意にみちた中で育った子は、だれとでも戦います。

 ひやかしを受けて育った子は、はにかみ屋になります。

 ねたみを受けて育った子は、いつも悪いことをしているような気持ちになります。 

 心が寛大な人の中で育った子は、我慢強くなります。

 はげましを受けて育った子は、自信を持ちます。

 ほめられる中で育った子は、いつも感謝することを知ります。

 公明正大な中で育った子は、正義心を持ちます。

 思いやりのある中で育った子は、信仰心(信頼心)を持てます。

 人に認めてもらえる中で育った子は、自分を大切にします。

 仲間の愛の中で育った子は、世界に愛をみつけます。

タイトル 受験期のアドバイス
受験期のアドバイス ~親の心構え~受験期の子どもと保護者にアドバイスを送ります。 受験は自分のためだけじゃありません。聖書の言葉に「狭い門から入りなさい。」「招かれる人は多いが、選ばれる人は少ない。」というのがあります。「選ばれる」のに必要な「ふさわしさ」を身に着けなければならないのです。 和田秀樹氏が、『受験は要領』という本で、「受験は頭のよしあしでなく、“暗記”と“要領”だ」と述べています。さらに、受験勉強は1時間13万円のアルバイトと述べています。 イェール大学助教授の成田悠輔氏が、一流校に行っても二流校に行っても将来の収入は変わらず、指導力の高い教師に習えば習うほど、年収が上がっていると指摘しています。 高校受験は中学1年生から(金をかけて)準備した方がいいでしょう。 受験期の親の心構えについて教えます。...
タイトル 学力より人間力
「学力」より重要な力…それは「人間力」だ!1998年の学習指導要領改訂以降、「生きる力」がは学校教育で身につける力とされています。 「子」が「大人」になるのに身に付けなければならないのは、「明」「暖」「誠」「行」「体」「心」「智恵」「知識」の8つの力です。 人が人として生きていくために欠かせない生命力には、「體力(体力)」「氣力(気力)」「識力」の三つの力があります。 「受験学力」は、あまり将来の役には立ちません。 イェール大学助教授の成田悠輔氏は、学力による一流大学でも二流大学でも、将来の差はなく、それよりも、指導力の高い教師に習うことが大事だと述べています。 教育経済学者の中室牧子氏も、人間の社会的成功には「学力」は小さな要因で、「人間力」の方がはるかに重要だと述べています。 経団連の調査では、新卒採用選考にあたって特に重視したのは、人間関係・コミュニケーション能力と独創力・主体性でした。 「人間関係力」をつけるためには、固定観念からの脱却が必要であり、「独創力」を発揮するためは、種々の条件をクリアしなければなりません。そして、「人間力」向上のためには、言葉の力を育てることです。...

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