キャリア教育とは・・・

社会人基礎力

「キャリア教育」というと、職業技能を身につけることと勘違いして、小学校・中学校の義務教育ではあまり関係ないと思われている方がいますが、そうではありません。

一般には馴染みがないかもしれませんが、経済産業省が2006年(平成18年)に「社会人基礎力」というものを発表しています。

これは、3の能力/12の能力要素を掲げたもので、3の能力とは、

それぞれ、

1.前に踏み出す力(アクション)とは、「一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力」で、

2.考え抜く力(シンキング)とは、「疑問を持ち、考え抜く力」で、

3.チームで働く力(チームワーク)とは、「多様な人々とともに、目標に向けて協力する力」で、

があげられています。

3の能力/12の能力要素

1.前に踏み出す力(アクション)

  ~一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力~

①主体性変化に前向きに対処する力、範囲を限定せずに主体的に動く力
②働きかけ力協業力、ネットワーキング行動、多様な人たちとの繋がり、パートナー力、相手との壁を越えて多様性を活かす対話力、人間関係資本、関係構築能力、異文化集団に飛び込み(混沌、未知、異文化を受け入れ)信頼を勝ち得る(周囲を巻き込む)力
③実行力詰める力、やり切る力、組織に隷属せず高い志を持ちピンで立てる力、チャレンジする力

2.考え抜く力(シンキング)

  ~疑問を持ち、考え抜く力~

④課題発見力考え抜く力、問題発見能力、システムとして物事を考える力、ソーシャルとビジネスを融合する力、見えないものが見える力
⑤計画力高い倫理観を持ち正しい選択をする力、詰める力、金融的投資能力、未来を予想する力
⑥想像力抽象思考力、価値判断力  

3.チームで働く力(チームワーク)

  ~多様な人々とともに、目標に向けて協力する力~

⑦発信力協業力、ネットワーキング行動、多様な人たちとの繋がり、パートナー力、相手との壁を越えて多様性を活かす対話力、人間関係資本、関係構築能力、異文化集団に飛び込み(混沌、未知、異文化を受け入れ)信頼を勝ち得る(周囲を巻き込む)力 
⑧傾聴力 
⑨柔軟性変化に前向きに対処する力、
⑩情況把握力感情を学ぶ、EQ(Emotional Intelligence Quotient)、情緒的資本
⑪規律性シチズンシップ、高い倫理観を持ち正しい選択をする力
⑫ストレス コントロール力Work As Life

新たな3つの視点

新たな3つの視点とは、

1.何を学ぶか(学び続ける力、「OS」と「アプリ」、マインドセットとキャリアオーナーシップ)、

2.どのように学ぶか(リフレクションと体験・実践、多様な能力を組み合わせる。)、

3.どう活躍するか(自己実現や社会貢献に向けて、企業内外で主体的にキャリアを切りひらいていく)です。

この3つの新しい視点は、現行学習指導要領が目指している3つの方向性「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」と直接に繋がっています。

自己実現や社会貢献に向けて、企業内外で主体的にキャリアを切りひらいていくためには、児童・生徒の時代から、よりよい社会を作るという目標を共有し、社会と連携・協働しながら、未来の創り手となるに必要な資質・能力を育むことが求められるわけです。「社会に開かれた教育課程」や「カリキュラムマネジメント」の実現が早急に求められているのはそのためです。

学校でキャリア教育をすすめていくうえで、児童・生徒が様々な場面で活躍すること、つまり、自己実現をしながら、主体的に学校や地域に貢献していくという姿勢を育むという視点を欠いてはダメだということでしょう。

進路選択時には、「Be ⇒ Do ⇒ Have」

人は、何のために生きるのでしょうか? 

実は、生きる目的に、これという正解はありません。しかし、どんな自分でいたいのかという、自分の「あり方」を起点に考えると、やるべきことが見えてきます。

タイトル 生きる目的
生きる目的 ~知床を旅してわかったこと~知床岬を訪れた理由は、「何のために生きるのか?」という疑問に答を見つけたかったからでした。 「人生100年時代」と言われていますが、生きる目的を知っている人は、人生がうまくいくとか、充実した人生になると思われます。古今東西、様々な偉人たちが「何のために生きるのか」という命題について語ってくれています。しかし、「何のために生きているのか、生きる目的がわからない」・・・「わからない」からその答をみつけるために、生きていろんなことをやってみることが大切でしょう。 生きる目的に正解はありません。 「私は〇〇のために生きているんだ」と考えることで、人生はなぜかうまくいくことが多いと思います。...

簡単なワークを紹介しましょう。

まず、自分が今、「欲しいもの(Have)」を書き出します。次に「やりたいこと(Do)」を書き出します。では、その結果、自分はどうなるか、「自分のあり方(Be)」を考えます。

たとえば、(Have)では、スポーツカー、高級腕時計、別荘など。(Do)では、ドライブ、高級パーティー、不動産投資など。その結果、(Be)では、金持ちになる、人から羨ましがられる、モテる、などがあげられるでしょうが、その程度で、あまりたくさん出てこないでしょう。

では、反対に、「あり方(Be)」⇒「やり方(Do)」⇒「持ち方(Have)」の順で考えてみましょう。

(Be)では、健康に生きる、感謝できる、自信をもつ、と書き出したら、(Do)では、早朝散歩をする、「ありがとう」を口癖にする、堂々と歩く。そして、(Have)では、万歩計、メッセージカード、歩きやすい靴、などと明確に出てくるでしょう。「あり方(Be)」がはっきりすると、ビジョンが明確になり、やるべきことが見えてきます。そうすると、今まで「欲しい」と思っていたものが色あせることもあります。

進路を選択する時、自分の学力から行ける高校や大学を選んでから、将来を考えようとすると、高校や大学でつまづくことがあります。進路選択のコツは、ずばり、将来の青写真を作ることです。自分が将来どんな人生を送りたいのか、どんな仕事に就きたいのか等、夢と希望を語れるようにすることです。そうすることで、必然的に、高校や大学も決まってきます。これが、「あり方(Be)」⇒「やり方(Do)」⇒「持ち方(Have)」の考え方です。

もちろん、人生には様々な出会いやトラブルがありますので、必ずしも、今、頭に描いた青写真のようになれるとは限りません。しかし、その方向に向かって進んだということが、自信にもなり、今の生活を充実させることにつながるのです。

キャリア教育の例

トライやるウィーク

「トライやる・ウィーク」とは、兵庫県の中学2年生が1週間、学校を離れて、職場体験や福祉体験、地域文化体験などを行う活動で、1998年度から始まりました。

当時、1995年の阪神・淡路大震災と1997年の神戸連続児童殺傷事件という二つの出来事を受け、子どもの「心の教育」の充実が求められました。兵庫県では、「心の教育」と「生きる力」の育成を目指して、働く意味や社会とのつながり、自分なりの生き方を見つけることを目的として、学校・家庭・地域が連携してこの体験活動を実施してきました。

生徒たち、特に中学生は、授業・部活動・委員や係の仕事,家に帰ったら塾や習い事,その他に友達とのつき合い,ゲーム遊び・・・、毎日の忙しい生活は、大変なプレッシャーでしょう。大人であっても、あまりに忙しい毎日では、精神的にも肉体的にもまいってしまいます。プレッシャーを受け、ストレスを感じた時、身体は危険信号を発します。そんな時、大人なら、ストレスをうまく処理できる方法を身につけていますが、中学生ではなかなかそういうわけにはいかないでしょう。

中学生が精神的に安定した生活を送るためには、何もせず、ぼんやりする時間が必要です。

「うちの子ったら、寝ているか、食べているか、音楽を聞いているか、友達としゃべっているか・・・いっつも、だらだらしてばかりで・・・」という親御さんの声が聞こえてきますが、それは、中学生にとってとっても大切な時間なのです。

ミリオンセラーになった「子どもが育つ魔法の言葉」の著者、ドロシー・ロー・ノルトという人が、「10代は自分探しの時期」だと述べています。10代の最優先の課題は、自分探しであり、「こんなふうになりたい」と思う大人に近づいてゆくことが大切です。友情を育み、好きな異性に胸をときめかせ、才能を伸ばし、夢を追いかけ、進路を決めてゆくのです。その前に、ゆっくり自分について考えなくてはなりません。自分探しには、ある程度の時間がかかります。

「トライやるウィーク」は、自分探しのきっかけにする時間でもあります。トライやるウィークは、授業も部活動もせず、学校というプレッシャーの場から離れて、社会や世間に目を向け、働くということを考えたり、大人の世界を垣間見たりする機会を中学2年生に与えようという発想から生まれたものでした。

兵庫県で始まった「トライやるウィーク」のような試みは、全国に広まり、各地で中学生の職場体験やキャリア教育が実施されるようになっています。

しかし、今、トライやるウィークも始まってから30年がたち、本来の目的であった、自分なりの生き方を見つける「自分探し」から少しずつズレてきたように感じられます。学校によっては、2~3日や半日程度の職場体験であったり、トライやるウィークの期間中でも学習会や部活動が実施されたりしているケースも多くなってきました。また、受け入れ業者や施設も固定化し、マンネリ化しているという指摘もあります。

ワーキングホリデー

2002年、オーストラリアとニュージーランドに海外教育研修で行った際、随分多くの日本の若者たちがワーキングホリデーで滞在していました。

ニュージーランドの羊Show…日本人ワーホリがいっぱい!

ワーキングホリデー(ワーホリ)とは、日本と協定を結んだ国や地域で、青少年が休暇を楽しんだり、語学学習をしたりしながら、滞在資金を補うために一時的に就労が認められる特別なビザ制度のことです。生活費を稼ぐための仕事(アルバイト、インターンシップなど)や語学学校への通学が許可されており、現地で生きた経験を積むことができます。

1980年にオーストラリアとの間でワーキングホリデー制度が開始され、現在、30か国・地域との間で実施されています。

年齢制限は、18歳~30歳が一般的で、滞在期間は1年~最長3年程度です。相手国ごとに一生に一度の利用しかできませんが、カナダ、スロバキア、韓国では一生涯2回の参加が可能です。

日本人へのワーホリビザの発給数は、10,000件を少し超える数で推移し、2020年のコロナナウイルス流行時には大幅に減少しましたが、2022年以降、急増しています。

ただ、若者にとって、ワーキングホリデーは素晴らしいキャリア教育のチャンスなのですが、必ずしも、メリットばかりではありません。特に近年、語学力が不足していると仕事が見つからず、現地での生活や交流が困難なことからストレスを溜め、リタイアするケースが急増しています。また、物価高騰による資金面での負担が大きく、1~3年間の空白期間が帰国後の就職で不利になることもありますので、高い計画性と強い意志力をもってトライして欲しいものです。

インターンシップ

主に大学の3回生や大学院修士課程の1回生が、単なるアルバイトと違って、職業意識の育成や業界・企業研究、自己適性の見極めを目的として、在学中に企業や官公庁などの職場で、実際の業務を体験・見学する制度を「インターンシップ」と呼んでいます。

半日~1日の「オープン・カンパニー」と呼ばれるものから、5日以上、長いものでは1年間に及ぶものまであり、今では就活生の約9割が参加しています。

インターンシップには、様々なメリットがあるものの、学業との両立が困難になるなど、ディメリットもあります。

ちなみに、ワーキングホリデーの受け入れが盛んなニュージーランドでは、義務教育の終了した高校5年生たちが、約半年間のインターンシップを行っています。

社会人に必要なスキル

さて、社会人に必要なスキルは、経済産業省が提唱する「社会人基礎力」(①前に踏み出す力:アクション・➁考え抜く力:シンキング・③チームで働く力:チームワーク)が基本となります。

特に、多くの企業や組織で活躍し続けるために不可欠なスキルをあげてみましょう。

1. コミュニケーションスキル

・傾聴力:相手の意見を丁寧に聴き、理解する力。

・発信力:自分の意見を分かりやすく伝える力(報告・連絡・相談)。

・柔軟性:意見や立場の違いを理解し、合わせる力。

2.問題解決スキル

・状況把握力:主体的に問題を的確に把握し、原因を分析し、解決策を考え実行する力

3.規律・管理能力

・規律性: 社会のルールや約束を守る力

・ストレスコントロール力:ストレスの原因に対応し、自己管理する力

・時間管理力:業務を効率的に進める力

4.基本的なビジネススキル(テクニカルスキル)

・ビジネスマナー:言葉遣い、身だしなみ、電話応対など

・ITスキル:Word、Excel、Powerpointなどの基本操作

・文書作成能力:適切なメールや文書を書く力

5.ライフスキル

・自己認識力・振り返り(リフレクション): 自分の現状を客観視し、改善を続ける力

これらのスキルは、単に高校や大学を出たからといって身につくものではありません。昔の日本のように、子どもは家族の働き手として家事や育児をするのが当然だった時代なら、必然的に社会に出る前にこのようなスキルを身につけてきたでしょうが、現代では、トライやるウィークやワーキングホリデー、インターンシップのようなキャリア教育を意図的に実施することが大切だと思います。

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経済産業省が「社会人基礎力」3の能力/12の能力要素を発表しています。
1.前に踏み出す力(アクション):①主体性、②働きかけ力、③実行力
2.考え抜く力(シンキング):④課題発見力、⑤計画力、⑥想像力
3.チームで働く力(チームワーク):⑦発信力、⑧傾聴力、⑨柔軟性、⑩情況把握力、⑪規律性、⑫ストレスコントロール力
また、3つの視点には、1.何を学ぶか、2.どのように学ぶか、3.どう活躍するかがあげられており、これらは、学習指導要領の3つの方向性「何ができるようになるか」「何を学ぶか」「どのように学ぶか」と直接に繋がっています。
進路選択時には、「あり方(Be)」⇒「やり方(Do)」⇒「持ち方(Have)」の順で考えるといいでしょう。
兵庫県で実施されている「トライやるウィーク」、30か国・地域との間で実施されている「ワーキングホリデー」や「インターンシップ」などを通して、企業や組織で活躍し続けるために不可欠な社会人に必要なスキル(コミュニケーションスキル、問題解決スキル、規律・管理能力、ビジネススキル:テクニカルスキル、ライフスキル)を身につけるようにしなければなりません。