本物の歴史教育が新たな歴史を作る。
日本と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査
皆さん、おはようございます。
2023年、こども家庭庁が、日本、アメリカ、ドイツ、フランス、スウェーデンの5か国の13 歳~ 29 歳までの男女を対象に、大規模な意識調査を実施しています。
その結果の一部を紹介しましょう。
●あなたは自国の社会に満足していますか、それとも不満ですか。

『満足』と答えた割合はドイツ( 63 . 1%)で最も高く、次いで、スウェーデン(6 0 . 0%)、フランス(46 . 5%)、アメリカ(42 . 3%)となっており、日本は34 . 6%で最下位でした。
●自国の将来は明るいと思いますか。

『明るい』と回答した割合は、ドイツ(61 . 8%)が最も高く、次いで、スウェーデン(61 . 1%)、フランス(55 . 3%)、アメリカ(49 . 2%)と続き、日本は23 .1%で最下位でした。
●社会をよりよくするため、私は社会における問題の解決に関わりたいと思いますか。

『そう思う』と回答した割合は、ドイツ(73 .7%)が最も高く、次いで、スウェーデン(64 . 1%)、アメリカ(59 . 1%)、フランス(58 . 9%)と続き、日本は43 .4%で最下位でした。
●将来の国や地域の担い手として積極的に政策決定に参加したいと思いますか。

『そう思う』と回答した割合は、ドイツ(58 .9%)が最も高く、次いで、スウェーデン(54 . 0%)、アメリカ(53 . 7%)、フランス(47 . 7%)と続き、日本は33 .8%で最下位でした。
これらの結果をみると、「社会をよりよくしたい」と志す日本の青少年の比率は、欧米諸国と比べて際立って低いことがわかります。
伊勢雅臣氏が『感動・感謝・志を育む歴史教育』コモンセンス (国際派日本人養成文庫)という書籍で、この現実は、日本の歴史教育が、本来の目的である「国家及び社会の形成者」を育てることを果たしていないことの表れであると言及しています。
「社会をよくしたい」と思う若者を育てるのは、テストで点を取らせる教育ではありません。先人たちの苦難と志に触れ、感動し、感謝し、そして、憧れを持ち、自らもその志を受け継ごうと思う体験が必要なのです。
歴史教育が新たな歴史を作った実例
1800年、イギリスの人口はフランスの3分の1ほどで、経済規模は半分以下でした。
しかし、その14年後の1914年には、植民地も含めると人口4億12百万人となり、GDPも圧倒的な大帝国へと成長しました。
その原動力の一つが、偉人顕彰の歴史教育でした。
19世紀のベストセラー『Self Help』は、300人以上の偉人を描き、国民の志を育てました。この本は明治4年に翻訳出版され、日本でも100万部を超えるベストセラーになっています。
日本にも同じような時期がありました。
明治の初期、東京帝国大学の学生たちから一番慕われていた人物は誰だと思いますか。
答えは、楠木正成です。
徳川光圀が楠木正成を顕彰して建てた神戸市の湊川神社境内にある楠木正成墓碑「嗚呼忠臣楠子之墓」の碑に、幕末の志士たちはこぞって参拝し、先人の志を受け継ぎました。吉田松陰、坂本龍馬、西郷隆盛、伊藤博文らも、楠木正成の物語から志を受け取った人々でした。

その結果、黒船来航からわずか66年で、日本は国際連盟の常任理事国となり、有色人種国家として初めて世界の指導的大国に仲間入りしました。
これこそ、歴史教育が歴史を作った事例です。
日本の歴史教育は子どもたちから『志』を奪っている。
現在、殆どの日本の歴史教育は、テストのための「暗記物」になっています。
私は、教師になった1年目、社会科の教師でした。最初は、地理や公民、政治・経済、倫理・社会などには興味があったのですが、どうしても歴史は覚えることが多く、「昔にあったことを覚えても何の役にも立たないのでないか」という疑問もあって、歴史は好きにはなれませんでした。
しかし、ある時、授業のために下調べをしていて、はっと気付いたことがありました。
例えば、文化の絶頂期は、戦乱の時代からおよそ100年かかるという事実です。ヨーロッパでレオナルド・ダ・ビンチやミケランジョロらといったイタリア・ルネッサンスを代表する偉人が活躍したのは、メディチ家が出来てから100後でした。ヨーロッパ文明が最も栄えたのは、ナポレオンがワーテルローの戦いで敗戦した1815年から100年後、第一次世界大戦が始まる前でした。また、日本でも、1600年の関ヶ原の合戦から100年後の元禄時代に、井原西鶴、松尾芭蕉、近松門左衛門などが出て、江戸文化の最盛期を迎えています。この物差しを当てれば、現在は、第二次世界大戦が終わって、まだ約80年で、文化が栄えるのはもう少し先ということになるでしょう。戦争の後遺症が完全にない世代にならないと、文化は栄えないです。ある本によると、1985年から2005年生まれの子どもたちこそが、今後の日本の繁栄の鍵を握っているといいます。
「歴史は繰り返す」と言われますが、歴史を学ぶことは、同時に、これからの時代を予測することでもあるのです。すなわち、「過去を学んで未来を知る」ことであり、そこに歴史を学ぶ意義もあると思います。
現在の歴史教育の問題点
さて、現在、日本の歴史教科書は、少し大袈裟にいうと、大きく次の3つのタイプに分かれているように思います。
(1) 知識注入型―上から目線で先人を論断し、口先だけの評論家を育てる。
(2) 思想誘導型―根拠なき反日的結論を押しつけ、革命家を育てる。
(3) 歴史物語型―先人の声を聴き、感動・感謝・志を育てる。
現在の日本の歴史教科書観の3つのタイプで、例えば、日露戦争についての記述をみてみましょう。
(1) 知識注入型
「1902年にイギリスと日英同盟を結んだ日本は、ロシアが南下政策で勢力を広げたことに対し、危機感を強めていた。ロシアとの交渉が決裂し、1904年2月、日本は満州や朝鮮半島を守るため、宣戦布告して、ロシアとの間でやむなく戦争を行った。東郷平八郎率いる日本海軍は、ロシアの強力なバルチック艦隊を日本海海戦でほぼ全滅させ、勝利をおさめた。アメリカ大統領の仲介で講和条約(ポーツマス条約)が結ばれ、日本は朝鮮での優越権や、南満州の鉄道利権、樺太の南半分を手に入れた。」
(2) 思想誘導型
「日露戦争における日本の勝利は、東洋の立憲国家による西洋帝国主義への勝利と捉えられた。しかし、実際は、韓国・満洲利権をめぐる帝国主義国家同士の争いに過ぎなかった。日本はその後、1910年には、日韓併合を行い、韓国を植民地として統治した。」
(3) 歴史物語型
「政府の重要方針を決定する最高幹部である元老の一人で、枢密院議長だった伊藤博文の言葉を紹介します。
『今度の戦については、陸軍でも、海軍でも、大蔵でも、日本が確実に勝つという見込みを立てている者は一人もない。しかし、打ち捨てて置けば、ロシアはどしどし満洲を占領し、朝鮮に侵入し、遂には我が国家までも脅迫するに至る。事ここに至れば、国を賭しても戦うの一途あるのみである。』
日露戦争は大きな代償を払っての戦争であった。戦後のポーツマス条約により、日本は韓国の指導権や南満州の権益、南樺太を獲得したが、賠償金が得られず、その不満から、国内では日比谷焼打事件や韓国併合など、政治・社会の大きな変化へとつながっていった。」
歴史を暗記物ではなく、先人たちが生きた「物語」として学ぶことが大切です。当時の人々はなぜその選択をしたのか、どんな思いでどんな苦闘を重ねたのか、そうした「なぜ?」を追いかけながら先人の声に耳を傾ける時、子どもたちの心に感動と感謝が生まれ、「自分もこの国のために何かしたい」という志が芽生えてくるのです。
しかしながら、残念なことに、今日の日本の歴史教育は、殆どが(1) 知識注入型か、(2) 思想誘導型です。論拠となる史実を示さず、子どもたちが主体的に考える機会がありません。また、抽象的な結論だけが押しつけられており、知識は得られても、子どもたちの心には何も伝わっていないでしょう。先人の言葉はなく、歴史研究者の解釈だけが書かれています。
歴史教育の質が次世代の日本を決めるのです。
先人の言葉をそのまま届け、感動・感謝・志を育てる「歴史物語型」教育へと転換が望まれます。
|
「皆さん、おはようございます」授業では教えない“生き方”教育 スライドで語る全校朝礼のお話[本/雑誌] / 長井功/著 価格:1280円 |
![]()
|
「皆さん、おはようございます」授業では教えない“生き方”教育 スライドで語る全校朝礼のお話【電子書籍】[ 長井功 ] 価格:1000円 |
![]()
|
【送料無料】「皆さん、こんにちは」パワースポットが語ってくれた“人生の生き方”/長井功 価格:1540円 |
![]()
まとめ
こども家庭庁が行った、日本と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査によると、「社会をよりよくしたい」と志す日本の青少年の比率は、欧米諸国と比べて際立って低いことがわかります。この原因について、伊勢雅臣氏は、日本の歴史教育が本来の目的である「国家及び社会の形成者」を育てることを果たしていないことの表れであると言及しています。
「歴史は繰り返す」と言われますが、歴史を学ぶことは、これからの時代を予測することです。過去、イギリスでも日本でも、歴史教育が新たな歴史を作った実例がありました。
歴史教育の質が次世代の日本を決めるのです。
今日の日本の歴史教育は、テストのための「暗記物」になっており、殆どが「知識注入型」か、「思想誘導型」です。先人の言葉をそのまま届け、感動・感謝・志を育てる「歴史物語型」教育へと転換が望まれます。
